2007-11-14から1日間の記事一覧

「ふりむかないで」というハクのセリフには、どんなメッセージが込められているのでしょう。

昔話のモチーフには「見るなの禁」と呼ばれるものがあって、主人公の目的の達成と釣り合うタブーなんですね。それを破ると、これまでの努力の積み重ねが台無しになってしまう。ギリシア神話で、オルフェウスが冥界から助け出した妻エウリュディケーを振り向…

湯婆婆はなぜハクを操ったりするのでしょう。神は本来お客さんではないでしょうか。

魔法使い、呪術師というものは、本来神霊的存在と契約を結んで彼らを〈使う〉ことができるものです。陰陽師の使う式神だって、〈神〉なのですから。

この講義の読み解きは、先生独自のものですか。それとも、宮崎駿が本当に意図していたことでしょうか。

大事な点ですね。『もののけ』の方は宮崎の意図を正確に復原しようと努めましたが、『千尋』の後半はかなり評論的で、「私ならこう読む」という展開になってしまっているかも知れません。しかし、当然インタビューなどは参考にしていますので、かなり宮崎駿…

千尋の両親がどうやって豚から人間に戻れたのかがよく分かりませんでした。

ぼくもよく分かりませんが、『ハウル』のように、勢いで物語を終わらせようとする宮崎駿らしさ?が出ている気がします。とにかく、千尋の内なる力の発現ですべてを済ませて、表面的にはハッピーエンドに。ま、その強引な展開がある分だけ、背景にある哀切さ…

「この世界で生きてゆくためには、仕事を持たなければいけない」というセリフがありますが、これは主体性や生きる力を放棄していないと思えるのですが。また、ハクが、「この世界の食べ物を食べないと消えてしまう」といったことにも、何か意味があるのでしょうか。

あの世界では、労働=世界に奉仕することが主体性の代替物になりうる、ということではないでしょうか。湯屋で働くことを、アイデンティティーの代用にしている。おそらく、そういう人間は現実にも多いことでしょう。「北條勝貴」がいかなる人間かより、「上…

ラストで、大して時間も経っていないように振る舞っているのに、車に落ち葉が積もっているというシーンがありました。あれはどういうことなのでしょう。

異界訪問譚によく見受けられる、異界と現実とでは時間の進み方が違うことを意味しているのでしょう。おまけに、彼らには異界での記憶がありませんから、たった数分が数日、数週間になっていて驚くことでしょう。そこまでみせないのは、「物語は続いてゆくの…

作中で声を得たカオナシが「さみしい」と主張するシーンがありますが、電車の影のような人々もさみしい存在なのでしょうか。

「さみしい」というセリフは、カオナシの過度の喪失感と依存性から発せられるのでしょうね。他の乗客たちは確かにさみしいでしょうが、それを埋めるために何かを求めよう、というアクティブささえも失ってしまっている様子です。生の猥雑さより、死の安らか…

「銀河鉄道の夜」がモチーフなら、列車が海の上を走っているのも何か関係があるのでしょうか。

「銀河鉄道の夜」、海の上走ってましたっけ。ま、天の川(ミルキー・ウェイ)を走っているという意味では、ずっと水のなかではありますが。水と関係ある要素としては、タイタニック号に乗っていた姉弟と家庭教師風の青年が、氷の海からふいに列車のなかへ出…

行った列車が戻ってくるというのはどういうことなのでしょう。

終着駅を冥界とすれば……ということですね。これはもう想像の領域ですが、アニミズム世界では神霊はあらゆる世界を移動できるので、例えば仏教・バラモン教の輪廻の概念のように、現実界との重なりのなかに蘇生してくる神霊があったとは考えられないでしょう…

多くの物語のなかで、肉体と影の分離という現象がみられます。分離した影は主体性を失い、肉体を求めてさまようわけですが、影のない肉体には意識がちゃんとある。つまり人間は、肉体と意識だけでなく、肉体と意識と影という三要素によって構成されているのではないでしょうか。

哲学的ですねえ。確か、最近の『ワンピース』もそんな展開でしたね。物語が〈影〉を題材にすることが多いのは、それが人間の歴史のなかで、変わらぬ興味の対象であり続けたからでしょう。ところでご存知のように、人類最初の絵画は洞窟絵画が多いわけですが…