2008-01-16から1日間の記事一覧

柳を男女の出会い/別れの媒介とすることについて、女性に柳の名が付いていたり、柳に関連していたりするのは、「柳腰」「柳眉」といった言葉にみられるような、理想的な女性像を表すためという可能性は考えられないでしょうか。

柳を女性に見立てることは、そもそもその樹影が女性のしなやかさを連想させたからこそ生じてきたのでしょう。『柳氏伝』や『青邱野談』もそうで、必ずしも婚姻譚とは見なせないものでしょう。問題は、そうした柳=女性をめぐる男女の物語が、柳の持つ神話、…

樹木と人間との婚姻によって生まれた子供は、完全な人間なのでしょうか? 異類婚姻には、木霊以外の精霊との結婚もあるのでしょうか?

樹霊に限らず、異類婚姻によって生まれてくる子は「普通の子」ではない場合が多いですね。よく力が強いとか、何らかの超能力を持っていると語られます。日本最古の仏教説話集(奈良末〜平安初期の成立)『日本霊異記』には、雷神の申し子である道場法師が怪…

里山での樹木伐採を正当化するために、当時の人々が大木の秘密のような呪術的民話を利用したのは理解できるが、その後、同じ目的のために樹木婚姻譚を取り入れたのがよく分からなかった。

樹木婚姻譚は、大木の秘密のように単純に自然への勝利を語るものではなく、樹木と人間との交流を細やかに描いている点がネックですね。授業では背景にある山々の荒廃を強調しましたが、常に樹霊というものの実在を意識している木鎮めの文化、それを担い続け…

とりいそぎ、樹木婚姻譚の単元の参考文献のみリストアップしておきます。『日本昔話通観』『日本伝説大系』などの民話集成を用い、木霊婿入り・木霊嫁入りの話をピックアップしてゆくのも手です。2003cの私の論文の巻末にも、資料を集成した表がありますので参照してください。

・有岡利幸 2004 ものと人間の文化史118『里山II』法政大学出版局・小椋純一 1992 『絵図から読み解く人と景観の歴史』雄山閣出版 1996 『植生からよむ日本人のくらし―明治期を中心に―』雄山閣出版・何清谷校注 2006 『三輔黄図校注』三秦出版社・郭富光 199…

レポート関係の質問です。

Q. レポートの内容は日本を舞台にしなくてもいいのでしょうか。A. 講義の内容を踏まえてもらえれば、他国を扱っても構いません。日本を含む東アジアとの比較もちょっと入れてくれると、なおいいですね。Q. レポートで、地方にある寺の由来として語られる樹木…

日本では、柳は幽霊とともに出てくるイメージがありますが、それはいつごろ形成されたものなのでしょう?

近世の絵画世界で成立するものと考えていいでしょうが、その背景には様々な心性の反映があります。ひとつは講義でも扱った、東アジア全域に及ぶような女性と柳との関わり、別れの象徴であること(死と結びつきやすい)。もうひとつは川の問題。柳は川の付近…

柳は信仰の対象なのに、どれを扱う柳匠はどうして被差別民なのでしょうか

聖/賤が表裏一体で容易に返還されるファクターであることは、人類学・民俗学・宗教学などの分野でよく言及されてきました。最も典型的な事例は「ケガレ」に関わる民俗です。『古事記』上巻の神話世界では、アマテラス・ツクヨミ・スサノヲの三貴神は、イザ…