2008-01-25から1日間の記事一覧

樹木伐採の際に「中臣祭文」が使われたとのことですが、わざわざその度に神官のような人を招いたのでしょうか。

樹木を伐る際に唱えられていたと思われる祝詞・祭文の類は、他にも幾つか見出すことができます。有名なのは『延喜式』神祇/祝詞に載る「大殿祭祝詞」で、木鎮めの技術を受け継ぐ忌部氏が樹霊を天皇居宅の守護神化するものなのですが、その前半部分は伐採時…

レポートで「物語における武器イメージ」を扱ったのですが、鎌足の鎌が死神の鎌に似ていると思いました。死神イメージは現代になって構成されたもので、もともとは裁判官のような役割だったのではないかと感じたのですが、先生はどう思いますか?

鎌を持った死に神のイメージは、恐らくタロット・カードあたりから普及するものでしょうから、日本においては現代的なものですね。ただし、その受け皿となった信仰、概念は中国に由来するものとして古代からあります。『霊異記』には、冥界から死期の迫った…

ダキニ法で用いられる式盤が、東南アジアでみるシヴァ神の象徴の石と似ている気がした。

シヴァリンガですね。あれは男性器と女性器の交合した形で、世界の誕生を表すものです。世界を象徴する点では式盤と同じ意味を持っていますが(風水思想においても、女性器と類似の形状を持つ地形こそが最も理想的な空間と考えられていますしね)、起源や機…

陰陽道と狐というと、私はやはり安倍晴明を連想するのですが、彼は藤原氏とも関わりが深かったそうですし、その出生に狐が関わっているのも何か関係があるのでしょうか。

安倍晴明が狐の子であるという話は、謡曲や浄瑠璃、歌舞伎の〈信太妻〉において語られます。原型となる人間と狐の異類婚姻譚は『霊異記』上2に確認できますが、それが晴明の出生と結びつくためには幾つかの段階が必要なようです。講義でも扱った鎌足の鎌を狐…

人間の世界と向こう側の世界を往復する狐の役割が面白いと思いました。『書紀』にも出てくる流星がなぜ狐を示すことになるのかよく分かりませんが、客星がよくないことを示すように、狐も悪いものを表したりするのでしょうか。

講義でもお話ししましたが、簡単にいってしまうとやはり〈境界〉的な存在なんでしょうね。狐は自然の森・山=野生と、人間の住む里=文明を往復する存在です。同様の現れ方をする鹿や猪が、農作物を食い荒らす害獣として駆除される一方、山神の使いとして祀…