2008-05-30から1日間の記事一覧

最後に扱った『春秋左氏伝』の史料ですが、「制は要害の地です。虢叔がそれを頼んで身を滅ぼしたところですから、弟には相応しくありません」とありました。なぜ相応しくないのか、よく分からなかったのですが。

制は、殷を滅ぼした周の武王の叔父にあたる虢叔が、東の守りとして配置された要衝の地(河南省汜水県)です。以来、その子孫が守護してきましたが、B.C.767に鄭の武公によって滅ぼされました。荘公のいっているのはこのことですが、言葉の表面上の意味として…

『春秋』三伝は、どうして『春秋』に注釈を付ける必要があったのでしょう。

『春秋』の文章は簡略すぎ、追加説明がなければ意味が通らないほどなので、注釈を必要とするのです。儒教聖典の場合、こうした原テクストを「経」と呼び、注釈を「伝」といって区別します。前者は仏教の「経」典とほぼ同じ意味になります。簡略すぎるという…

日本で死者に「水」が関わってくるのは理解できるのですが、中国でも黄「泉」というのが少し意外です。なぜ泉と死者とが結びつくのでしょう。

これまで扱ってきた史料によれば、黄泉の「泉」は地下水脈のことのようですね。6/6の講義で扱った『史記』の始皇帝陵の記事でも、「三泉を穿ち…」といった表現が出てきます。井戸の問題もありますし、地下は水が湧くところだという認識と結びついているので…

位牌の由来の問題ですが、頭蓋骨を立てかけて霊を呼ぶということは、霊自体が常に骨に宿っているということではないのでしょう。しかし、位牌の方には、常に霊が宿っているというイメージがあります。心性の変化があったのでしょうか。

位牌も霊位や戒名・法名を記した札に過ぎませんから、霊魂が常時宿っているという考え方はないと思います。いつも仏壇に置かれており、故人の名前が書かれているので、礼拝する側が勝手に思い込んでしまうということでしょう。例えば浄土真宗という宗派では…

スサノオの話ですが、そもそも、なぜ杉が鬚に由来し、なぜ造船材に選ばれたのでしょう。何か説得的な理由があるのでしょうか。

スサノオの体毛の部位と生じる樹木に必然的関係があるのか、といわれると、なかなか容易には答えることができません。しかし、現代の私たちには分からないような連想があったのだろうと思います。例えば、『古事記』に出てくるオホゲツヒメ神話では、スサノ…

修羅で木棺を載せた船を引くという葬送儀礼は、木棺を古墳まで運ぶためのものなのでしょうか。それとも、船を引っ張ってゆくこと自体に意味があるのですか。

いい質問ですね。機能主義的に考えるなら、もちろん前者で、船に載せる形にしたのは副次的なものだということになるでしょう。しかし文化史的に考えれば、儀礼形態自体に意味があるのだ、ということになります。先日上梓した樹木婚姻譚に関する拙論でも触れ…