2009-05-18から1日間の記事一覧
聖徳太子の業績に対する史料批判は昔からあったのですが、現在の傾向は中部大学の大山誠一氏の研究が発端となっています。大山氏の論点は多岐にわたりますが、その基盤は、太子の業績を伝える『日本書紀』と「推古朝遺文」(法隆寺系統の仏像銘文等々)の徹…
歌のそもそもの役割は神霊と交渉することにあったと思われますが、やがてそれが、人間と人間を結びつける手段としても使われるようになります。いわゆる「歌垣」では、男女が歌の掛け合いを行うことで、結婚相手を選びます。『風土記』には歌垣に関する地名…
『書紀』は必ずしも国内向けではなく、むしろ、朝鮮半島や中国王朝に対して、日本文化の先進性を証明するために作られた色彩が濃いと思われます。だからこそ、漢籍の文章を使用していることが大切なのです。現代の感覚ではパクリかも知れませんが、古代にお…
それはもちろん持っていたでしょう。事実、日本各地には中国や朝鮮に由来すると考えられる神々を祀る神社が存在します。『書紀』や『古事記』のなかにも、太陽神と思われる「新羅王子天之日矛(アメノヒボコ)」が渡来し、列島に定着してゆく様が語られてい…
ミズチが鹿に化けること自体は、瓢箪とは直接的には関係ありません。現代人にとっては不思議かも知れませんが、古代人にとって、鹿と水とは非常に関わりの深い存在であったようです。それはひとつには、海や川を渡っているときが鹿の最も無防備な状態であり…
講義でお話ししたような木鎮めの祭儀は、未だに実践している林業地帯はあるはずですし、とくに神社建築を行う場合などには遵守している地域が多いと思います。その典型が、大規模な式年遷宮を行う伊勢神宮であり、同じ伝統のうえに御柱祭を行う諏訪大社でし…
きちんと祭祀を行っていても災害が生じる場合、古代人は、自らの祭祀の方法が間違っているか、神意が自分たちより離れていると考えます。そこで卜占を通じて神の意志を読み取り、神の望む祭祀の方法を探り出そうとするのです。亀卜や託宣などの手段で神の意…
雷神や水神が強く信仰されるのは何も日本だけではなく、多くの神話や原始信仰にみられる現象です。ギリシア神話や北欧神話、インド神話などでも、大体において神々のパンテオンの頂点に立つのは雷神です。それは雷の被害が極めて恐ろしいものであり、また農…
講義でも話しましたが、私たちが現在みることのできる形態としては、史料18の方が古態を留めているからでしょう。しかし、それゆえにいろいろな矛盾も孕まれてしまっています。天皇の夢に出てきたのがいかなる神なのかは議論のあるところですが、下段に説明…
自然信仰にも、表層部分では長い歴史のなかで大きな変転があります。例えば、和歌山県南部の海岸にはかつてイザナミの墓所と考えられた窟がありましたが、平安時代になると熊野社の分身である王子神を祀る場所となり、また仏教の弥勒信仰に基づいた経典埋納…