2009-06-15から1日間の記事一覧

富本銭は、当時、どのような目的で使用されたのでしょうか?

天武朝に使用され始めた当時は、呪術的な機能を持つ〈厭勝銭〉としての性格が強かったと思われます。モノやコトを仲立ちする貨幣なるものの機能は、アジアにおいてそれが発生した古代中国の殷帝国の頃から、呪術的な色彩を帯びてきました。鋳造量もさほど多…

牛車もこの時代から使用されたのでしょうか?

牛に車で荷物を引かせたことは、藤原京造営期から確認できます。関係の道具が発掘されているんですね。ただし、平安時代の貴族たちが移動手段に用いたような牛車は、この頃はまだ使われていません。

軍馬と民生用の馬とは育て方も違うと思うのですが、馬を家畜にするという知識はどこから入ってきたものでしょうか。また、民生用の馬の使用が一般化したのはいつ頃からでしょうか。

日本列島に馬がもたらされたのが古墳時代(五世紀頃)で、その飼育法や乗馬法も、多く半島や大陸からもたらされたものと考えられます。馬の飼育にあたった氏族として、馬飼(養)部や臣・造姓の馬飼(養)氏が記録にみえます。牧は馬の交配・出産管理が役割…

多産者・長寿者への賜物についてですが、長寿者はともかく、多産者は儒教的イデオロギーの範疇で捉えられるのでしょうか。 / 長寿者への賜物は、彼らを尊敬すべき対象とみていたからですか、保護すべき対象とみていたからですか? / この制度のために増税がなされたことはありましたか。また、多産者にいちいち褒賞をしていたら財源が足りなくなるのではないでしょうか?

多くの子供を産むということは家の安定に繋がります。これは孝行を尽くしたことになりますので、やはり儒教イデオロギーと関連します。 高齢者や孤独者への保障制度は存在しましたが、それもやはり王の徳治を天下に喧伝するための施策であり、現在の社会保障…

アマルガム鍍金に使用した水銀によって、中毒などになる人はいなかったのでしょうか?

それは少なからずあったと思われます。東大寺大仏の鍍金には大量の水銀が使われたと思われますが、そうした水銀や銅による汚染が、平城京から都を遷す契機のひとつになったとする見解もあります。

富本銭の鋳造に銅とアンチモンを使用したとのことですが、合金を得る知識はどのように獲得されたのでしょう?

貨幣の鋳造自体は、天武朝が保有していた中国・朝鮮の最新の技術を結集して行われたものでしょう。最古の富本銭が枝銭の形でも発掘されている飛鳥池遺跡は、金・銀・銅・鉄などの金属類、琥珀・瑪瑙・水晶などの玉類、ガラス、漆などの工房が業種別に並ぶ一…

文武の時代に鉱物資源がたくさん発見されたのは、方法や技術が改良されたからではなく、それ以前にあまり採掘されていなかったからでしょうか?

文武朝の鉱物貢上は文武天皇2年に集中しているので、計画的に調査と採掘が行われたものと考えられます。恐らく、工業についても制度・施設の整備が進められていたので、これまでの各国の産物資料を中心に大規模な調査が行われたのでしょう。当時の国家体制…

予言という話がチラリと出ましたが、東洋史概説で、古代中国の占いでは当たったものしか記録しなかったという話を聞きました。古代日本ではどうだったのでしょう?

正確には、中国でも「当たった内容」ばかりが記録されていたわけではありません。殷代の甲骨文にも、例えば王の占断の結果が事実と異なるという内容のものが確認でき、王に対する直諫を意味するのだと想像する見解もあります。やはり、基本的には、占いは占…

趣味で日本神話を勉強したいのですが、最もポピュラーなお薦めの文献はありますか?

日本文学者の三浦佑之さんが、古老が語り出すという形式で『古事記』を現代語訳したそのものズバリ、『口語訳 古事記』神代篇・人代篇が文春文庫から刊行されています。また、古代から近世に到る日本神話のメタモルフォーゼを追った斎藤英喜『読み替えられる…

動物霊が予言するという話を聞いて、「件」という妖怪のことを思い出しました。何か関連があるでしょうか?

件は一般の人に予言をする動物ですから、シャーマンの守護霊とはあまり関係がないと思います。ただしそうした伝承の根源自体に、動物霊を用いて予言をしたシャーマンの存在があった可能性はあります。件はその神格化された姿かも知れません。

神や巫術などとまったく関わりのない地域に住んでいた人でも、シャーマンの力に目覚めることはあるのでしょうか? / シャーマンには誰でも突然なってしまうものなのですか?

今まで巫祝文化ともまったく関わりなく、例えば都市の中心部で普通に暮らしてきた人が、巫病などを契機にシャーマンになるということはあります。ただし、そうした人々がア・プリオリにシャーマンであるというより、民俗宗教に基づく師匠―弟子の関係のなかで…