2010-04-19から1日間の記事一覧
日本史や東洋史で卒論を書くつもりなら、原文を読む力がなければだめでしょう。結局、「書き下し」や「注釈」はある一個人の解釈によって成立するものですので、これも事実そのものではありません。漢文は読み方によって意味が違ってしまう場合もありますし…
日本固有ですか……代表的なのは、やはり鬼や天狗でしょうね。「鬼」は中国の言葉では死霊を意味し、疫病をもたらす疫鬼をはじめさまざまな悪霊が存在します。日本に入ってくると、「隠」の音から発するらしいオニの言葉が当てられ、まずは姿形の定かでない悪…
講義との関連でいえば、例えば「殺された女神」や「穂落神」の神話・伝承でしょうか。前者は『日本書紀』『古事記』に記載のある穀物化生神話で、スサノヲ(あるいはツクヨミ)が穀物神のオオゲツヒメ(あるいはウケモチ)を殺すと、その死体から穀物や蚕な…
経年変化に強い石材を墓碑として明確な墓所を作り、子孫に及ぶまで墓参を続けるという年中行事的な習俗が庶民にまで及ぶのは、やはり近世でしょう。それ以前は、埋葬されても後々場所が分からなくなったり、そもそも個々人の埋葬地をはっきり覚えておく必要…
輪廻の考え方が根付かなかったわけではなく、仏教が伝来したばかりで充分流通していなかったということです。神身離脱言説が列島で語られ始めた8世紀後半、ひとつの命は生まれ変わり死に変わりを繰り返すから、あらゆる生き物は自分の父や母といえるという…
いちばん手軽なのは『高僧伝』でしょう。これは昨年から、岩波文庫として現代語訳が刊行され始めました。一般の書店で入手できます。
『西遊記』も、確かに神仏習合の世界が前提ですね。しかも玄奘の天竺訪問がモチーフになっていますので、仏教優位に作られています。天帝や泰山府君、太上老君などの道教の神々も登場しますが、彼らは釈迦を師と仰いでいるわけです。孫悟空自身が道教的な存…
よく気づきました。この表現にはさまざまな問題が隠されています。ひとつには、中国で夢に梵僧や金人(金色に輝く神人)が現れて僧侶に夢告を行う、という言説形式(物語、表現の型のようなもの)が存在することです。『大師伝』はこれに倣っているのでしょ…
日本の『古事記』や『日本書紀』の段階でも、単なる自然の象徴を超えた、人間的な神々が登場します。神や精霊の姿は、おそらく最も古い段階では森羅万象そのものの形で表され、やがてそれらに宿る霊的なものとして人間に近い容姿で表現されるようになります…
必ずしもそういうわけではありません。おそらく、現在表層的に把握できる相違は、アニミズムの歴史段階の相違や、どの時期の史料が豊富に残っているかによって生じているものでしょう。中国でも山や川そのままを神と崇める事例は確認できます。著名な五岳信…
伝来は書物によりますが、講義でも扱った『高僧伝』の類や、それを引用した『法苑珠林』などの類書の影響が大きかったと思われます。8世紀、律令国家のもとで仏教の輸入が急速に進みますが、国家の許可を得て得度した僧侶のなかには、月の半分を都にて教学…