2010-05-21から1日間の記事一覧

鶴と亀はどちらも稲作に関わるモチーフとして扱われていますが、これらの動物が長寿の象徴とされていることと関係があるのでしょうか。亀にも、鶴のように何かを与えるといったエピソードはあるのでしょうか。

関係あるでしょうね。亀には穂落神的なエピソードはありませんが、アジア圏で最も古い神話は「洛書」に関わるものです。中国の夏王朝を開いた禹が舜帝の命を受けて治水に従事しているとき、洛水から出現した亀の甲羅に描かれていた「宇宙の真理」で、後の魔…

史料8の末尾に「即ち此の峰の南に就きて…」とありますが、これは道教の影響でしょうか。道教伝来の手がかりにはなりませんか。

確かに、墓が南にあるというのは道教ぽいですね。墓の風水的設置を語る『宅経』の類は中国でも広く利用されていましたし、日本でも仏教の疑偽経として作られたものが7世紀には使われた形跡があります。『風土記』の説話も、表現としてはせいぜい7世紀末ま…

ヲロチの話で川上から箸が流れてきますが、これも何か霊的な力があるのですか。

ヲロチの物語の文脈においては「上流で人が生活している」ことを意味しますが、ハシにはそれなりに象徴的な意味があります。ヤマト言葉では、内/外の接する境界的事物をハシと呼ぶ傾向があるようです。川にかかるハシ(橋)、隅や縁辺を意味するハシ(端)…

異類婚姻譚のうち、女性が異類の仲間になってしまう場合と死んでしまう場合がありますが、その相違は何なのでしょう。たまたま出会ったり、連れて行かれたりという遭遇の仕方の違いも気になりました。

そのような微細な相違に着目するのは重要なことです。同一の神話形式に語り方の相違があるのは、ひとつには社会における機能、役割が相違しているからで、その背景には語られる時代の相違があります。例えば女性が異類の仲間になってしまう場合は、未だ異類…

ヲロチが峡の霊とすれば、蛇の姿になったのはどういうわけでしょう。やはり洪水との関連でしょうか。

端的には斐伊川の洪水への畏怖が大きいでしょう。しかし、現在我々が読むことのできる物語自体は、王権による「蛇」への蔑視が含まれていないとも限りません。講義でもお話ししましたが、ヤマタノヲロチ神話は『古事記』に掲載されるものの、『出雲国風土記…

男性の神格に女性が供犠される、あるいは神婚の相手となる事例は多いようですが、その逆はなかったのでしょうか。

少ないながらもありました。最も典型的なのは「橋姫」です。たまたま通りかかった男性が供犠されようとした話など、血なまぐさい物語が多く残っています。山神にも女性の神格がみられ、祭祀の日に彼女を喜ばせるため、男性が裸で山中を走るなどの行事が行わ…

神話のなかに王権の権威を高める意味を持っているものが多く出てきましたが、当時の実質的な権威とはどれほどのものだったのでしょう。

政治的な権力の拡大を狙っているむきもありますが、それよりも重要なのは、大王の権威が自然神を上回るのだということを喧伝することでした。これらの神殺し譚は多く開発の現場で語られ、工事の達成と一体になって、人々の自然神への恐怖を払拭していったも…