2010-06-11から1日間の記事一覧

『捜神記』の355〜357の話ですが、以前に蟹=多産ということで産屋との関わりが論じられていました。海亀も多産のイメージがあるのですが、この話もそうでしょうか。

その可能性はあります。次回以降に触れることになると思いますが、やはり少数民族のトーテムを描いた盤瓠神話は、雄ですが「犬」が取り上げられます。蟹や亀ほどではないですが、犬も多産や安産の象徴とされたり、守り神とされたりする動物です。常に子孫の…

天人女房譚などの原型が中国の怪異譚にあるとのことですが、その他「見るなの禁」など、日本の昔話によくみられるモチーフに中国由来のものはあるのでしょうか。

中国の神話伝承は日本の原型の宝庫といってよいほどで、探せば探すほどよく似たものが出てきます。よって漢籍の知識がないと、日本の神話、伝承の研究も底の浅いものになってしまいます。例えば、日本の神話のうち「見るなの禁」が最も早く現れるのは、『古…

「任谷」が羽衣を着た男に犯され蛇の子を妊娠したというのは、禁忌を破ったために蛇を孕むことになったのですか?

禁忌に関わる記述はありません。自分ではどうしようもない怪異、不思議な出来事について描いたものか、あるいは根底に異類婚姻の問題が存在するのかも知れません。腹を割かれた任谷は宮中へ出仕して宦官になった、というのが結末ですが、男性機能を喪失する…

『捜神記』を読む際、中国哲学との関連もあると思うのですが、今日掲示されていた史料では、それがあまり見受けられませんでした。基層部分に哲学は広がったのでしょうか。

『捜神記』に収められているような伝説・説話は、中国哲学的に高度なものはあまりみられません。ただし、講義でお話ししたように五行志と密接な繋がりを持っていますので、陰陽・五行思想を反映する部分は多くあります。その前提として、戦国末期には集成さ…

レヴィ=ストロースのトーテム理解と、伝統的なトーテム理解の差がよく分かりませんでした。

授業では何度も説明しましたが、確かにこれは難しい問題で、レヴィ=ストロースの思考も著作によってかなりブレがあることもあります。『今日のトーテミスム』『野生の思考』ではラディカルですが、その後の『神話論理』シリーズでは、本質主義的な理解に近…