2011-01-12から1日間の記事一覧

上巻の清和天皇と良房の面談シーンで、天皇が顔も髷も露わな姿で、しかも無精鬚などを生やして描かれていました。後白河院の「天皇を超える権力」を示したものとの説明を受けましたが、直接の先祖をそのように貶して描いてよいのか、と少々腑に落ちない気がしました。

清和天皇の直接の血筋は息子の陽成天皇をもって絶え、皇嗣は叔父の光孝天皇へ移ってしまいます。その流れが後白河院まで行き着くわけですので、彼にとって清和は直接的な先祖ではないのです。歴代天皇が意識した「祖先」とは、皇統上「画期」をなす人物と、…

伴善男の屋敷の場面は、女性が善男の寝室にいるようですが、これは製作年代の家族誌を考えるうえで重要でしょうか。

絵巻の描かれた12世紀末頃は、妻方同居から新処同居への発展型で家族の居住が行われていたと思われます。源信邸、伴善男邸とも、新処同居の形式とみてよいでしょう。ただし、信も善男も妻が誰であったか分かりませんので、史実としてどのような婚姻形態、居…

描き直しをする場合は、紙を削って消してから再び描くのでしょうか?

上巻の朱雀門等の場面もそうでしたが、基本的に白色顔料を用いて線を消し、その上からあらためて描いているようです。下巻のうずくまる下僕の場面は、少々彩色が剥がれたことによって、消した以前の線も透けてみえてしまっているようですね。