2012-01-18から1日間の記事一覧
確かに、そういうシーンは目にしますね。まず犬の場合、最後の授業でも絵巻をみていただきながらちょっとだけ触れましたが、犬が何かを察知して吠え騒ぐ場面が、緊張や事件の前触れとして描かれることがあります。遠吠えは夜半、静けさの象徴でしょうが、犬…
中国古代の仰韶文化などに、埋葬時の容器の内側に魚紋を描く事例があり、魚を再生の象徴とみていたと思われます。戦国末〜漢代の『山海経』には、死んでからすぐに復活した帝顓頊の乗り物の龍を、半魚の神「魚婦」としており、やはり魚を再生の象徴と捉えて…
中国の道教では、蝉が仙人の象徴と認識されています。俗人の抜け殻を捨て、神人として生まれ直すという意味ですね。アジアでは、そうした観点から昆虫を特別視する要素もみられます。しかし、日本列島に限定していうと、絹生産において珍重される蚕以外には…
それほど違いはなかったと思いますが、水に関わりを持つ蛇の生態が、洪水や鉄砲水などの水害を蛇そのものとして表象してゆくのですね。『古事記』に登場する八岐大蛇も、出雲の斐伊川が山々を削って扇状地に押し寄せる洪水の神格化とみられています。狭い谷…
まずは、サギやツルといった目立つ容姿の鳥が、田起こしを始める春先や、稲穂の実る夏頃に、水田を訪れる生き物のなかにあったということでしょうね。銅鐸にある長首・長脚鳥の絵画には、魚をくわえているものも認められます。当時の水田は川と直結しており…
狐憑きについては、2つの側面から考える必要があります。1つは、「狐憑き」とされる当事者自体に異常な言動が確認される場合。その少なくとも一部は、何らかの精神病の一種と考えていいでしょう。現在でも精神科には、「脳内にチップが埋め込まれ国家に操…
日本列島で崇められている神格は、このような極端な両義性を持つものが多いのです。例えば『古事記』『日本書紀』の神話で有名なスサオヲにしても、一方ではヤマタノヲロチを倒すような英雄性を発揮しつつ、一方では彼の泣き叫ぶありさまによって草木は枯れ…
恐らくは人工的に増やしたというより、農村だけでなく都市でも猫を飼育することを勧め、贈与の関係のなかで拡大していったということでしょう。ペスト菌を媒介するノミは、ネズミに付くことで蔓延してゆきますが、実は猫にはつきにくいことが実験で立証され…
一概にここからここまで、とはいいがたいものがあります。アニミズム的な世界観を持つ地域では、生物のみならず無生物、人工物に至るまで、霊性を認められる場合があります。本当に森羅万象の一切が信仰されうるのですが、しかし細かくみてゆくと、そのなか…
アヌビスは死者の領域を管轄していますが、やはり犬が屍肉をあさることと関わりがあるのでしょう。モンゴルではオオカミがトーテム動物として信仰されていますが、モンゴル民族は死体をオオカミに食べて貰わないと、天上へ上れないと考えていたようです。ギ…
猫又自体の記述は中世前期から見受けられるのですが、未だ尾が二つに分岐したものとの形容はありません。当時は、それこそ「狸」で代表されるような山獣とみられていた節があり、100年生きた猫が猫又になるなどの話が出来上がるのは江戸時代以降のようです。…
長く生きるものへの信仰は、恐らく、人間の寿命を超えたものへの畏怖が根底にあると思われます。古い道具や家具が化け物になる「付喪神」ももちろんそうですし、古い家、古井戸なども恐怖の対象として捉えられることがあります。動物では、万年生きるという…
ベアリング=グールド、セイバイン 2009(1856)ウェルズ恵子・清水千香子訳『人狼伝説―人食いと迷信の関係について―』人文書院ベルナール、ダニエル 1991(1981)高橋正男訳『狼と人間―ヨーロッパ文化の深層―』平凡社ローレンツ、コンラート 2009(1949)小…