2012-11-21から1日間の記事一覧
そうですね、『もののけ姫』に登場するシシ神の森は、屋久島等々に取材して造型したものですから、できるだけ人間が足を踏み入れられないような、畏怖すべき自然の姿を描こうとしたのでしょう。しかし結局、ラストではシシ神の森はなくなって、里山にみるよ…
自然を扱ったものとしては、コミック版『ナウシカ』の方が深く複雑で、自然/人間の二項対立を描いた『もののけ姫』より優れている、とぼくは思います。『ナウシカ』の自然=世界は『もののけ姫』のそれより強靱で、腐海を生み出しつつも浄化と回復を続け、…
例えば、授業で扱った『桃太郎』など、江戸時代を通じても内容に変化が生じます。よく知られているのは、川上から流れてきた桃から桃太郎が生まれてくるパターンと、桃を食べて若さを取り戻した爺さん・婆さんが子供を産む、というパターンの2つが確認され…
白神山地については、弘前大学の長谷川成一氏の研究によって、近代以前の植生が詳細に明らかにされています。それによると、17世紀前半の白神山地は針葉樹の群生が中核をなしていたものの、授業でもお話しした近世初期の大開発によってヒバやスギなどが盛ん…
古い時代でいえば、例えば漁業の発展です。現在の日本の食文化には魚食の占める割合が大きいですが、その基礎が作られたのが、温暖化の環境変化に適応しようとした縄文の食文化なのです。氷河期が終了して気温が上昇してくると、これまで大型哺乳類が跋扈し…
人間が手を加えることで現状を維持していた森林などは、その「保全」の取り組みを止めてしまうと、様々に綻びが生じて植生が変質してゆくことになります。それは、生きている樹木ならば当たり前のことで、草木の生まれては死んでゆくさまが繰り返されるうち…
日本で本格的な植林が行われるのは、近世以降に過ぎません。それまでの山地利用は、ほぼ自然の回復力に頼ったものでした。よって、人間による開発が自然の回復力を上回ると、禿げ山のような状態が長期にわたって持続したり、土砂流出、河川の天井川化による…
もちろん一部には、聖域を侵蝕すること、神木とされるような樹木を伐採することへの畏れ、抵抗は存在しました。私は以前、「樹木が伐採に抵抗し、切り口から血を流したり、伐った人間が病気になったり頓死したりする」伝承の類を、北海道から沖縄まで所在調…
やはり、権力の象徴であったからでしょうね。古墳に関していえば、一定の環境開発を前提に築造されるわけですから、自然を制圧したモニュメントともいえるわけです。また各古墳では、カミとなった被葬者を祀りつつ、現首長が神的な力を手にするための諸儀礼…
国立公文書館のデジタル・アーカイブで確認できる元禄「下総国絵図」をみてみると、ちょうど葛飾郡と千葉郡の境界付近かと思うのですが、平地で山などの描写は確認できません。ただし、周辺は水田化が進み、干拓事業が展開された印旛沼も近いので、草山・芝…
次回の授業でお話ししますが、それが災害に発展した場合には問題視されます。記録に残るのは王権や政府のものですが、一般の村落共同体レベルでも、過度の破壊によって手痛いしっぺ返しが生じた場合には、開発を抑制するなどの措置が取られたでしょう。それ…
近代という時代は、文明の発展のために自然を素材として用いてよい、自然から解放されそれを制圧することこそ人間の宿命である、と考えられてきました。この単元の冒頭でもお話ししたとおり、しかしそのことが地球環境のバランスを崩し、幾多の環境問題を生…
文明が永久に拡大・発展を続けようとするその傾向に歯止めをかけ、生物多様性の維持された環境が現状より悪化しないよう、注意してゆくことが理想です。そのためには、生態系に対するより深い研究と、ある程度の管理的介入が必要となるでしょう。しかしそれ…