2012-12-19から1日間の記事一覧
これは、群れで行動するのが普通である狼が単独で行動していることから、群れをなすことをよしとしない、より孤絶性が強調された形で形容がなされたのです。群れから離れた狼は本来無力であることから、大きなリスクを背負ってなお孤独であること、孤高の存…
ベオウルフは、熊の解説の際にもお話ししたように、bear-wolfであり、「熊狼」を意味します。こうした英雄叙事詩は、ゲルマンの神話や古ヨーロッパの信仰に取材していますので、むしろキリスト教が排撃した多神教的要素を色濃く残しています。熊であり狼であ…
授業でもお話ししたように、キリスト教の言説は牧畜文化を核に成り立っています。牧畜にとって狼は敵であり、ゆえに悪魔と重ね合わされてゆくのでしょう。ちなみに、人類学者の谷泰氏らの見解では、人類史のうちで牧畜が開始されたのは西アジアであり、家畜…
うーん、確かに、方角としては北狄ですね。しかし漢文化においては、狄よりも戎の方がイメージがよいのです。狄には、匈奴をはじめ数々の征服王朝があり、暴力的なニュアンスがつきまとっているためでしょう。それに対して戎は、初めての統一王朝を形成した…
遊牧民族であるモンゴル族にとっては、鹿は狩猟によって得るものであり、やはり野生の象徴です。鹿の角は大地の豊饒を表し、美しい毛皮は、衣服や敷物の料として重宝されました。以前にお話ししたチペワイアンがカリブーを、インディアンが山羊を神聖視した…
かつて、犬の祖先はジャッカルであると考えられていた時期もありましたが、現在では狼説が主流です。ハスキー犬やカラフト犬など、とくに北方系の犬には狼の血が色濃いようであり、狼の人に飼われたことを確認できます。日本では、近世以降に幾つかの記録が…
狼猟は近世各地で実施されるようになりましたが、食用として狩猟されたわけではなく、あくまで狼害を抑止するためでした。日本では弥生時代から犬の肉を食べていたので、狼をまったく食べなかったわけではなかったでしょうが、肉としては臭みが強く美味では…
桃太郎の敵は鬼ですが、陰陽道の考え方では、東北すなわち丑寅の方角を鬼門とし、よくないモノが侵入してくる入り口と考えます。それと対称的な方向が、未申(ヒツジサル)=南西、酉(トリ)=西、戌亥(イヌイ)=北西などですが、このうち日本にいない未…
日本では、恐らくは稲作の本格化する弥生時代から、鹿を神聖視することが始まります。祭祀の道具である銅鐸などに鹿の姿が描かれ、最終的には春日大社や鹿島神宮、厳島神社、諏訪大社などで、鹿を神の使いとする考え方が定着してゆきます。鹿の角の生え替わ…
直接的に関わっているというより、熊が助けてくれたという不思議が、神仏のもたらした幸運だという考え方でしょう。熊自体に神性を認めるような描写はないようです。
ロンドンやシートンの作品は、ロマンティシズムでは括れないリアリティを持っていると考えています。双方とも、ゴールドラッシュに沸くアラスカで起きた自然と人間との戦い、ニューメキシコにおける牧場主と狼との戦いを前提にしているからです。まったく牧…
アマラとカマラの話ですね。最近では、この話は捏造であるとする説が有力になっています。実際は精神に障害を抱えた児童であったようですね。しかし、人間の子供を他の動物が養育することがまったくないのかと問われると、明確に否定することもできないよう…
これは難しい問題です。それを中心的主題に据えて研究している、といってもいいかもしれません。人間は環境に適応するために「文化」を構築する生物ですが、そのことと関連するのではないでしょうか。皆さんも考えてみてください。