2014-07-04から1日間の記事一覧

言説形式の伝播とは、具体的にはどのような手段、方法によって可能となるのですか。

書承と口承ですが、後者にはさまざまなパターンがあります。社会情況に支えられた噂のように広汎に伝播するもの、ひとつの共同体のなかだけで完結して伝承されるもの。伝説の場合は、その土地、もしくはランドマーク的な施設に関して語られることが多いので…

兄妹を洪水から救う亀が白いことには、何か意味があるのでしょうか。

講義でも扱いましたが、白色にはさまざまな象徴性が含まれます。まず一般的には清浄・純潔、そして死の表象。これらは関連していて、前近代のアジア世界では、喪服や死に装束に白色が用いられています。上記の白亀を考えるうえで重要なのは、洪水を占った亀…

日本の昔話にも、桃から生まれた人、竹から出てきた人、垢を捏ねて作られた人などが登場しますが、これらもみな中国由来なのでしょうか。

中国経由が多いですが、事例によります。桃太郎のモチーフには桃源郷伝承がありますが、物語の枠組み自体は、吉備津神社周辺の伝承など列島在来のものが使われています。『竹取物語』も、種々仏典や漢籍からモチーフを得ていますが、近年の研究では、やはり…

口頭伝承が残っているのは、民族・部族単位のものが多いのでしょうか。また、口頭伝承は、その地域共通のコモンセンス、暗黙の了解などとして、語り継がれるというより元から知られているものなのでしょうか。

必ずしも部族、民族単位とは限りません。その伝承自体が、いかなる空間をフィールドとして、どのような機能を担っているかにより、それぞれ性格が変わってきます。例えば、同じAという村に伝わっている伝承でも、村全体に共有される、例えば村の掟の起源や…

神話の歴史化と歴史の神話化という現象を、どのように説明すればいいのでしょうか。

この点をお話しするには、神話/歴史をそれぞれどう定義するかが重要です。ここでは、以前にお話ししたように、無時間性(起源性)/時間性(過程性)という区別を立ててみましょう。まず前提となるのは、エリアーデのいうように古代が神話的な時間にあたり…

レポートで高誘注型水没譚を扱おうと思っているのですが、レジュメに載っているもの以外でも探せばみつかるでしょうか。

「高誘注型」とのカテゴライズを用いて、授業で扱ったような神話・伝承を、環東シナ海文化圏全般で扱った研究というのは、実はぼく以前には存在しないのです。授業で扱ったものは厖大な数のなかの典型的なものですが、明確な高誘注型の形式を採るものはほと…

淮陽の「兄妹婚姻型洪水神話」には、「十万八千年」「九十九日」「四十九匹」など数字が頻出していますが、何か意味があるのでしょうか。

説話や伝承に刻み込まれた数字は、何らかの象徴である場合が多いですが、成立の背景がよく分からない場合など、なかなか読み解くのが難しい場合もあります。「十万八千年」は、干支の1週する60年が1800回回ってくるとのことでしょうが、「1800」の意味につ…

兄妹婚姻型の初子の障がいは、やはり近親婚による悪性遺伝が背景にあると思う。「除穢」の話は露骨に近親婚=穢れとする認識が表れていたが、この禁忌的な面と世界の再構築が同時に扱われるのはどういう理由からだろうか。

講義でも説明しましたが、現在人類学では、インセスト・タブーは女性の交換を促すために設けられたと考えています。すなわち狩猟採集時代、移動性であった人間の集団は15人程度が適正規模であり、その人数では、近親婚をした場合に縮小再生産に陥ってしまう…

兄妹婚姻型洪水神話には「ノアの方舟」に通じる選民思想があるように感じたのですが、何か関わりはあるのでしょうか。

近代になって採録された兄妹婚姻型洪水神話には、『旧約聖書』の影響を受けたとみられるものが明らかにあります。中国西南地域の少数民族にもキリスト教は布教されていますし、朝鮮半島の民間伝承には、まさにノアの物語として兄妹婚姻型を語る事例も存在し…

世界各地で、下半身が蛇だったり馬だったりする絵が描かれるのはなぜなのでしょう。その動物のイメージに合わせて、何らかの文化的・歴史的背景が表れているのでしょうか。

半人半獣の想像力は、やはり人間と動物の能力を併せ持つ存在への憧憬に由来するものでしょう。それらはもともと神的なものでしょうが、ヒト至上主義が強くなってくると、逆に怪物へと貶められてしまいます。ギリシア神話のメドゥーサなどがよく例示されます…

災害への危機感が薄れていったからこそ、天変地異を神話のなかに取り上げるようになった、という理解でよいでしょうか。

それもあるのでしょうが、都邑水没譚から兄妹婚姻型洪水神話へ移行する際にみられるのは、洪水を物語の一要素として位置づけることです。つまり、神話の核自体は人類の再生にあるのであって、洪水にあるのではない。また、なぜ洪水が起きたのかという問題が…