2015-12-18から1日間の記事一覧

先生は、神様や霊的なものをみたことはありますか?

残念ながらありません。ぼくは宗教上は無神論者なので、そうしたフレームで世界をみているからでしょうね。

毘盧遮那仏と大日如来はどう異なるのでしょうか。

同じ性質を持つものと考えてよいですが、前者は『華厳経』、後者は『大日経』などに説かれる存在で、いわば依拠する経典、教学のあり方が異なるのです。

ブッダが菩提樹で表現されていた当時は、いまのイスラム教のように、ブッダを人として表現すること自体が禁止されていたのでしょうか。それとも慣例的なものだったのでしょうか。

神聖なるものは具体的には表現できないために樹木や法輪によって表していた、これはやはり、明文化された法律というより一種の共同体規制であったと思われます。神像を多く造形していたギリシャ文化の影響で、聖なるものを擬人化した仏像が造られるようにな…

「人柱」というのも、今までは単に柱に形が似ているからと考えていましたが、それだけではなく柱を崇める気持ちから来る、とても神聖なものであるのかなと感じました。かかしはちょっと意味合いが異なるのでしょうか…。

人柱は供犠の一種ですが、神に生け贄として捧げられるわけはなく、柱として城や橋などの建築物を支えるものです。よって、人体自体を柱とする、その生命をもって困難な工事を完遂させるという残酷さを伴います。かかしはヒトカタでしょうから、宗教的にみれ…

斎槻の話を聞きながら、『となりのトトロ』で、メイが初めてトトロに会うとき、大木の根本の割れ目に落ち、その先で出会ったことを思い出しました。あの大木も、斎槻だったのでしょうか。

トトロに登場するのは、クスノキですね。かなり巨大になる常緑高木ですので、やはり神木に祀られる場合の多かったものです。ちなみに、樹木の洞から根の世界へゆくという発想は、古く『古事記』上/神代に出てきます。ヤソガミたちの迫害を受けたオオクニヌ…

樹木を神として崇めていた日本で、人間が樹木から出てきたと考えていたのは、人間を神と同義のものとみていたということでしょうか。

神話で語られるたいていの人類の起源は、神の子、もしくは似姿を持つものといった性格があり、それが尊厳の根拠のように位置づけられます。すでに授業でお話ししたように、狩猟採集社会のアニミズムにおいては、精霊は人間と同じ姿のものが、クマやトラなど…

柱の材料になる樹木そのものに宿る霊的なものと、人工物としての柱に宿るものとでは、性質の相違があるのでしょうか。

祭祀の種別や情況、それの斎行される時代・社会によって違いがありますが、例えば樹木を柱化する祭儀の過程で、樹木の生命そのものともいうべき樹神が、建築物の守護神的存在へと転化されてゆくといったことがあります。天皇が日常的に起居する宮殿を鎮祭す…

木のまな板をかんなで削ってもらったら、若返ったかのような顔になりました。神社の柱をまるごと替えるのはもったいないと思います。削ってきれいな色にして、細すぎて建物を支えられないというくらいになるまで使ってから交換する、ということは試みられなかったのでしょうか。

これは面白い質問です。というのは、自然を大切にしているかにみえるいわゆる「もったいない」という発想は、自然を資源としかみなくなってゆく一過程と捉えられるからです。神に対して何かを供える場合には、自分にとって最も大切なものを供えなければなら…

神社にとって柱は重要であると仰っていましたが、鳥居は何のために設置してあるのでしょうか。

一般的には、神聖な領域の出入り口を画する門を意味しています。神聖な領域と一般の空間とは、目にみえない境界で隠されており、一定のセオリーを順守しなければ「越境」することができないと考えられていました。参道はその唯一のルートで、鳥居はそれを段…

男根的なものは、領域国家の成立以前から、権力の象徴だったのでしょうか。

領域国家成立以前から、権力の象徴だったわけではありません。例えば縄文時代には、授業でもお話ししたように死と再生のサイクルが自然そのものとして崇められていましたが、その表現のひとつとして、生殖器信仰が盛んでした。男根や女陰を継承した石器を立…