2016-11-09から1日間の記事一覧

冬休み中の史跡見学で、どこかおすすめの場所はありますか?

そうですね、年末までに、おすすめスポットを紹介する時間を設けましょうか。ちょっと考えておきます。

東アジア世界論に興味を持ちました。中国が中心となり、文化が広がる背景には、朝貢形式が関係しているのでしょうか?

もちろんそうですね。次回から扱う古代の単元でも言及しますが、必ずしも冊封体制のなかに入らずとも、朝貢を通じて中国的文物が周辺に行き渡り、政治・社会・文化の活動もそれを基盤になされるようになる。東アジアの枠組みは、良くも悪くもそのようにして…

民衆個々に寄り添う歴史というのは初めて聞いたのですが、面白い考え方だと思います。これは現在の歴史観にどのような影響を与えているのですか? / 知識人がその傲慢さから一般の人々、あるいは対立する人々を嘲笑し、思想を押しつけるような運動のあり方は、例えばそれが左派のものであったとしたら、極右のすることと何ら変わりはないと思う。こういった傲慢な態度に陥らないような運動は可能だろうか。

ぼくが現在参加している、宗教学者、民俗学者、社会学者らとの共同研究に、日本における「パブリック・ヒストリー」の構築を目指すものがあります。これは、歴史実践を専門的研究者の独占から解放し、異なる価値観を持つもの、異なる政治的ポジションにある…

国民的歴史学運動の展開について、マルクス主義の考え方から、どう個々の主体のあり方に沿った歴史の形成へ、という視点が出てくるのでしょうか。

マルクス主義は、歴史の主体を支配層よりも民衆、農民や労働者に置いたのです。現状の資本主義的イデオロギー情況を打破するためにも、民衆の覚醒が第一であり、その主体形成に寄り添わねばならない。そうした発想から、個々の生業に基づく国民的歴史学運動…

歴史学が、ナショナル・ヒストリー形成の役割から抜けだし独立?するのは、歴史学にとってメリットのあることなのですか?

学問としては、いかなるものにも抑圧されずに真理を追究できる環境が理想的なわけですから、望ましい情況といえます。むしろ、戦後歴史学以降、歴史学関連の諸学会は概ねそうした意向です。

世界史の発展原則に関心を持ちました。近代資本主義の次は社会主義、そのあとは何が来るのでしょう。今後の世の中がどうなってゆくのか、予測を立てる方法があれば知りたいと思いました。

現在はむしろ、そうした「資本主義のオルタナティヴ」が構想できない状態が問題なのです。ネオ・リベラリズムが世界を席巻して種々の弊害をまき散らし、社会的格差の増大と集団の分断が加速するなか、資本主義の限界が誰の目にも明らかでも、それに変わりう…

世界に純粋な資本主義国がないなら、純粋は社会主義国はどうでしょうか?

ありませんねえ、つまりまだ実現されていないわけです。1989年以降、雪崩を打って崩壊した旧ソ連、東欧諸国も、社会主義の理想を掲げながら充分実現できず、むしろその計画経済性に端を発する専制権力の強大化、共産党一党独裁の情況に陥り、マルクスらが目…

世界が規則的に発展してゆくとのことであったが、例えば古代奴隷制は、日本ではどの段階に当てはまるのだろうか。

つまり、そうしたことを議論してゆくのが、時代区分論争であったわけです。極端にいうと、班田農民を奴隷と捉えれば古代となり、農奴と捉えれば中世ということになります。

私はマルクス主義に賛成ではないのですが、1950〜60年代の国民にとって、それはどのように市民権を得ていったのでしょうか。

やはり大きな魅力のひとつは、これまで国家が喧伝してきたものの虚偽性が露わになり、抑圧されてきたものを解放するベクトルがみえたことでしょう。一般の人々が自らの生活を改善してゆくために結社を作ることも認められ、各地で労働組合の形成も進みました…

マルクス主義歴史学の人々は、日本で実際に革命を起こそうとは思わなかったのでしょうか?

もちろん、戦前に思想弾圧の対象になったのは、マルクス主義者がコミンテルンの指導によって革命を起こし、現状の体制を打破しようとする意志を持っていたからです。戦後の学生運動においても、すべてがすべてそうした思想に一元化できるかどうかは別として…

さまざまな学問の根幹にマルクス主義が関わったのは、非共産主義国では希有なこととの説明があった。もしそうなら、なぜ日本ではそのようなことになったのだろうか。日本の社会がマルクス主義に適合的だったのだろうか。

歴史的・地域的にさまざまな差異、多様性があることを考慮しなければなりませんので、不正確な発言になりますが、列島の社会には、個人の突出を抑え集団の利益を優先する傾向が強いところがあると思われます。ゆえに、ヨーロッパ的な意味での〈近代的個〉の…

マルクス主義とは少し違うかも知れませんが、私は経済構造がイデオロギーを形成するという考えを持っています。例えば、第一次大戦後のドイツはインフレで経済破綻をしていた、そのなかでヒトラーの過激な思想に救いを求めたと思うのですが、これはマルクス主義的な見方でしょうか?

マルクス主義的にその情況をみるならば、ヒトラーを待望したのはむしろその経済破綻に打撃を受けた資本家層、富裕層であり、一般民衆は彼らの欲望を満たすべく扇動されたということになるでしょうね。ヒトラーが演説に用いた、人の感情に訴えるさまざまな言…

私は一般常識程度にしか歴史を学んでいないから、歴史は規則的、歴史は繰り返すようには考えられない。今から民主化が薄れ、独裁者が政治を行うように変わるとは考えられない。また戦争が起こるなんて、今は考えられない。でもだからこそ、歴史を学ぶマルクス主義者が「歴史は繰り返される」と考えて、これからの世に警告を発しているのかもしれないと思った。

重要な考え方ですが、マルクス主義は、「歴史は繰り返す」とは必ずしも考えません。あくまで、一定の法則に沿って歴史が展開する、ゆえにその法則自体は、それぞれの時代で同じ論理が繰り返されるとするだけです。しかし、例えば重要なのはやはりイデオロギ…

キャロル・グラックは、「後期近代」についての定義で、帝国主義や全体主義、全面戦争を経済成長を阻むものであるとしていますが、特需などを考えると反例になるでしょうか?

グラックの発想としては、帝国主義や全体主義の闘争の結果として全面戦争に至る、この点が問題です。特需というのは、自国が平和状態に置かれ、経済的関係においてのみ戦争に参加している状態で生じる事象でしょう。全面戦争に至ったならば、特需も何も、人…

「終戦」の語について、第二次世界大戦の惨禍を繰り返さないために、戦争の終わりを印象付けようと「終戦」としているとは、考えられないでしょうか。

まず、皆さんのリアクションをみていて、「終戦」という言葉の選ばれたこと、そうして現在でも使用されていることが、何か特定の支配集団なり何なりの思惑に沿う洗脳、操作のように感じてしまった印象がありました。確かに、8・15=終戦記念日の設定には、巧…