2017-05-21から1日間の記事一覧
各政体の理想的型である君主制、貴族制、民主制が調和をもって共存している状態こそが、ローマの混合政体であるとの考え方です。それまでのギリシアの政体は、3つのうちそれぞれが単独で形をなしていたために、理想型からの退行によって別の政体へと移行し…
これも少し違います。ヘロドトスが歴史の父と呼称されるに及んで、その著作である『ヒストリエ』が、歴史の代名詞になったということでしょう。
日本の古代国家における正式・正統な卜占は、神祇官の卜部が担う亀卜でした。これは、古墳時代に中国江南から採用したものと考えられており、時期的に考古遺物によっても裏付けられます。一方の太占は弥生時代から確認できる熱卜で、鹿の肩甲骨を用いるもの…
武丁期に最盛期を迎える甲骨卜辞においては、王の一挙手一投足を卜占するような状態であり、それゆえに卜辞を通じて王の事跡が記録されたわけです。しかし帝辛期にはそうした臨時の卜占がなくなり、卜占の回数自体も減少して、王の事跡を詳細に記録すること…
中国においては、商業の「商」が殷を指すように、このなりわいは、聖代の周王朝にあって滅ぼされ流民となった殷の人々がなすもの、との差別的な認識もありました。しかしそうした言説は、王権が人民を生産に専念させ、流通を管理して利益を独占するための情…
ひとつには、日本列島においては、複数の古代国家が競合・興亡するという情況に至らなかったことに原因があります。周王朝末期の春秋・戦国時代は群雄割拠の時代で、ほんの少しの判断の誤りが、一族や王権、国家の滅亡を招来する危険性がありました。そうし…
そうですね、キリスト教におけるラテン語や仏教におけるサンスクリットなどは、次第に神聖文字・典礼文字としての要素を色濃くしていったものです。これは、神聖なものを記し語る言葉を日常のそれとは区別しようという、宗教における卓越化の表れと考えられ…
それは誤解です。ヘロドトスらの著作はB.C.4世紀前後、一方の甲骨卜辞はB.C.14世紀頃が盛期なので、1000年中国のほうが古いことになります。ヘロドトスらの著作と同時期の史書は『春秋』や『竹書紀年』で、王権を正当化する要素の強いものですが、後の史書の…
それこそ、シャーマンにおける卜占、神殿における託宣などは、未来を展望する口承でしょう。デルポイのアポローン神殿における託宣が、いかに多くの人々の未来を束縛・規制したかは、種々の神話や記録に見出すことができます。東アジアの歴史記述が卜占から…
ヘロドトスが種々の口碑伝承=物語を史料に歴史を記述した点について、物語の虚構性を排し記録の事実性を追求したということでしょう。授業でお話ししたように、古代的客観性において「史実であるか否か」は、未来のために参照しうる材料として役に立つかど…
「歴史は繰り返す」は、古代ローマの歴史家クルチュウス=ルーフスの言葉とされ、マルクスはそれを引用して、「歴史は繰り返す、一度目は悲劇、二度目は喜劇として」と述べたわけです。ルーフスの場合は一般通念を言葉にしたに過ぎませんが、その内実は、文…
少し違いますね。大事紀年は、基本的に1年ごとに年の呼称が違ってきてしまいますが、一世一代の元号は、王・皇帝が退位しない限り用いられます。とにかく、その年の重要な一事件で1年を表すのが大事紀年、以事紀年です。
講義で紹介した落合淳思氏などは、その代表的な論者ですね。しかし個人的には、すべての甲骨卜辞の事例をそう解釈できるか、それはあまりにも近代的な解釈に過ぎないのではないかと考えます。卜占が神霊との交渉を必要とすることは、文化人類学的な調査・研…
祭政一致の神聖な王は、宗教的な能力とともに強大な軍事力も有しているために王なのであり、卜兆を読み解く力もそのことと無関係ではありません。殷における史官=卜官は知識人ではありましたが、やはり王のもとで宗教的業務をなす専門職であって、政治的・…
中国の卜占には、狩猟採集時代には主に主要な狩猟動物である鹿、牧畜時代には羊や牛、とくに占いに使用しうる面積との関係で牛、やがて亀甲が使用されるようになりました。もともとは神霊に対して動物を供犠すべく火に投じており、燃え残った骨の色合いや状…
発達していました。そもそも中国の史官は、卜占とともに暦の作成を主要な役割としており、それは天文の観測なしには成就できない職務だったのです。『春秋』『国語』などの古い史書には、熱卜や夢告などの内容を解釈するために、天文の運行と神話が重なりあ…
おっ、よく知っていますね。それは、亀の甲羅を使用した熱卜である、亀卜の起源ともいえるものです。1980年代以降、黄河下流域〜揚子江流域における大汶口文化早期以降の大型・中型墓より、亀の腹甲・背甲を綴り合わせて囊状にした器物が、多く小石や骨針・…
文字使用が一般的ではなかった古代社会においては、首長の口頭の命令、長老やシャーマンによる共同体の掟、神語りの託宣が、集団の結束と規律、円滑な経営を達成するうえで重要な意味を持ったことは間違いありません。また口頭のコトバは、その抑揚やリズム…
もちろんありません。紀元前後、古典世界でもキリスト教でもその萌芽はありますが、明確な時代区分が始まるのは授業で扱ったアウグスティヌスで、また現在の区分法に繋がる古代・中世・近代との3区分法は、ルネッサンス期を待たねばなりません。ただし、こ…
ここでの天は、確かに優しいですね。高誘が『淮南子』の文章を解釈して再創造した内容で、独自の意味を持つと考えたほうがよさそうですが、もちろん当時の神観念と無関係ではありません。中国の天は、ユダヤのヤハウェほど人間に期待していない、人間へ使命…
『古事記』の段階でもう出てきますが、そのなかには現在意味の伝わっていないものも多いですね。例えば、『古事記』雄略天皇段で、天皇に襲いかかる猪の状態を表現したウタキという言葉。一般的には憤怒の様子を示しているとされますが、藤井貞和さんは、そ…
『古語拾遺』が問題にしているのは、まさにそこです。この書は、同じ神祀りを行う一族でありながら、藤原鎌足を輩出したことで王権側から優遇されるに至った中臣氏を、批判するために書かれたものでもあります。『日本書紀』に掲載される神話のヴァリアント…
前にも少し書きましたが、記号が文字化しているか、文字として扱えるかは、連辞・連合関係によって考えるべきだと思っています。つまり、複数の記号が組み合わされたとき、隣同士の記号が連なって、ひとつの記号で表す以上の意味を持ちえているか。また全体…