2017-10-27から1日間の記事一覧

ウィンター・カウントについて、その図様からラコタ族の時間観念を「螺旋的」とするのは、強引ではないのだろうか?

民族社会の時間観念については、多く円環的であるとの分析は一般的にあり、神話や伝承、祭儀のあり方などから説得的に立証されています。太陽・月・星の運行、月の満ち欠け、季節の移り変わりなどからそうした認識が作られてゆき、〈死と再生〉という枠組み…

トーテミズムなどにおいて、無機物を信仰するという事例はあるのだろうか。あるとすれば、それに対しても、トランス・スピーシーズ・イマジネーションは発現するのだろうか?

以前、樹木が伐採に抵抗するという伝承を、中国から日本にかけて集めていたことがありました。その抵抗の形式で最も多いのは、切り口から血が噴き出すというものです。これなどは、樹木を「人間と同じもの」と表象した結果、生まれる表現であろうと思います…

「アニミズム的世界観では、精霊は人間の姿で捉えられる」とのことでしたが、アニミズムという言葉を用いてしまうと、そのなかでのさまざまなヴァリエーションがみえなくなってしまうのではないでしょうか。

授業でもお話ししたと思いますが、ご指摘のとおり、アニミズムという概念は、地域的・時間的な多様性を隠蔽してしまう語句で、その使用法については注意しています。精霊を人間体で考えることは、アニミズム概念の重要な核で、これを前提に多様性や時間的推…

農耕原罪論のところで、中国王朝と北方遊牧民族の対立を想起した。農耕/遊牧の二項対立的視点が、根底にあるのかもしれない。

そうですね。そのあたりの葛藤を理解するための参考文献として、中国の某文化人類学者がペンネームで書いた自伝的小説、姜戎『神なるオオカミ』(講談社)を推薦しておきます。映画にもなりましたが、小説の方がずっといい。文化大革命の時期、モンゴルに下…

神話を文化人類学的に分析してゆくうえで、何か入門的な書物はありますか?

残念ながら、パースペクティヴズムを簡易に理解できる著作は、まだないといっていいかもしれません。通常の神話分析ならたくさんの入門書が出ていますが、今回の参考文献リストに載せた煎本孝さんや中沢新一さんの文献は、人類学的な神話分析の多様性を分か…

トランス・スピーシーズ・イマジネーションとパースペクティヴィズムの関係ですが、前者を有する結果として後者の視点が発現するということでしょうか。

そうですね、分かりにくいのですが、私は逆であると考えています。つまり、対象をその視角から理解するという認識論が基底にあるために、他種・多種の視点を獲得しうるのでしょう。しかし、パースペクティヴィズムを持つ文化の構成員すべてがそうだというわ…

ブッダやシャカを、漢字ではなくカタカナで表記しているのはなぜでしょうか。

仏教だけではなく、神話学などでもそうなのですが、同一の尊格を扱った文献が複数存在すると、同じ存在を示していても表記が異なる場合が出てきます。例えば日本の神話では、『古事記』や『日本書紀』の間で、同じ神名でも表記が異なるので、その音を取って…

生命の循環が輪廻のなかで起こっているのなら、そこで殺害が行われたとしても、輪廻の枠組みから大きく外れることはないのではありませんか。仏教が、なぜ殺害を戒めるのかが、よく分かりません。また、仏教の生殺与奪は、基本的に動物のみを対象としているのでしょうか。植物を含めて考えるなら、基本的に何かを食べなければ生きていけない人間である僧侶たちは、どのように折り合いを付けているのでしょうか。

仏教は、輪廻のなかで生きること自体を苦しみだと捉えますが、その輪廻に生命を縛り付けている悪業のうち、最悪のものを殺生と捉えているわけです。仏教は生命の循環を維持しようと考えているわけではなく、そこからの離脱を最上としますので、殺生戒を設定…

農耕原罪論の「原罪」も「負債」ということでしょうか。地球から土地や種、肥料を借り入れて借財を作っているうちに、最後は破産するという暗示でしょうか。

面白いですねえ。厳密に定義すると、負債観の問題は、返済の意識を発動することが伴います。返済はたいていの場合、何らかの形で自然環境を表象する神格に、祭祀をなす形で果たされます。原罪認識自体も広い意味では負債感だと思うのですが、自らの存在を贈…