2017-12-22から1日間の記事一覧

東北や島嶼部など、稲作に向かない地域に対しては、どの程度柔軟に、租税制度を変えていったのだろう。

時代や政権のあり方によっても相違はありますし、環境的に米穀の収穫が難しい地域では、古くから代替物の貢納が許されていました。例えば、奥山にあって雑穀の焼畑や茶の生産を主要な生業としていた宮崎県の椎葉村では、江戸初期にこれを統括していた土豪を…

気候変動と人口の増加とは、どの程度関連性があるのでしょうか。情況が悪くなると生物は多産になるのか、危機感などもその原因でしょうか?

人類社会は自然環境の影響を直接的に受けないよう、文化文明を発展させてゆきます。授業でもお話ししたとおり、現在では古墳時代は寒冷期であったと考えられていますが、その際にも人口は増加し統一王権が誕生しているのです。環境の圧力が高まってこれまで…

樹木から生まれた人間の一例として桃太郎が挙げられていましたが、桃太郎伝説のルーツはヤマト王権のキビツヒコだと読んだことがあります。とすると、桃から生まれたくだりは後付けになると思いますが、これにはどういった意味があるのでしょうか(個人的には、神仙思想のにおいを感じます)。

桃太郎とキビツヒコとの関係はよくいわれることなのですが、しっかりと立証できているわけではありません。ただし、吉備津神社の縁起伝承は、中世後期以降多岐に渡って作られてゆき、人口に膾炙してゆきますので、まったく無関係ではないかもしれません。な…

スサノヲ―イタケルが樹木神の系譜とのことですが、イザナギ・イザナミによって生まれたククノチも樹木神なのではありませんか? 両者の関係はどう考えるべきでしょう。

ククノチは、樹木「神」というより樹木「霊」ですね。古代のヤマト言葉で、神霊を表す語句にはヒ・ミ・チなどがありますが、ミは自然物に宿る精霊的存在です。水の精霊であるミヅチ、火の精霊であるカグツチ、野の精霊であるノヅチなどが該当します。スサノ…

縄文時代の環状柱列や巨大柱列が古墳時代で途絶えてしまうのは、なぜだろう。稲へのトーテミズムと、宇宙樹・世界樹への信仰は両立しないものなのだろうか?

信仰の表層的形式は変わってゆきますが、その構造は概ね維持されると考えられるかもしれません。古い時代の巨樹信仰、柱列信仰は、一部には、諏訪の御柱祭をはじめとして、各地の寺社などに存する神木信仰として残存しています。伊勢神宮の心御柱など、神社…

須弥山像や類似した形の香炉台について、男性象徴であるとのお話がありましたが、これまでの授業に登場していたアジアの立柱にも同じような思想的背景があるのでしょうか? アマテラスが女神とされていることを考えると、神仏に制約を監視させるための依り代が男性象徴というのは、違和感を覚えます。

すべての神聖遺物を男性象徴/女性象徴で解釈するのは無理があるでしょうが、天地を繋ぐように屹立する柱や山には、男性象徴の重ね合わされることが多いことは確かです。縄文時代には、男性象徴を直接的に模した石棒が多くみつかっていますし、環状列石にみ…

仏像においての体骨柱は、宗教的意義もあるかもしれませんが、第一には技術的要因ではないでしょうか?

もちろん、その存在は構造的必要性からです。しかし問題はその点ではなく、授業でもお話ししたように、「体骨柱を立てる」ことが特質的に扱われ、恐らくは何らかの儀礼がなされていることです。当時はあれほど巨大な銅造仏像の先例がなかったため、造立過程…