2019-07-01から1日間の記事一覧

日本では、記紀神話がまったく活かされていないと仰っていましたが、建国神話と地域神話・民俗神話を同一に語れるのでしょうか。

まず、『古事記』や『日本書紀』を一読すれば分かると思いますが、これらはすべて建国神話として書かれているわけではありません。以前に別の質問に回答しましたが、これらは国家レベルの神話として再構成されたものではありますが、例えば『古事記』のほう…

赤色は魔除けの機能を持っていたそうですが、古墳石室内への施朱以外にはどんな例がありますか。神社の鳥居が朱色なのも、関係がありますか。

そのとおり。神社の鳥居、寺院の欄干、地蔵の前掛けなどなど、歴史・考古・民俗のなかに、さまざまな事例を見出すことができますね。講義でも少し触れましたが、赤色顔料の成分は、酸化鉄系のベンガラ(いわゆる朱。弁柄。インドのベンガル地方の原産なので…

植物に対する神話は、あまりないのだろうか。 / 星との異類婚姻譚はないのか。人間には近しいはずだろう。

授業でも少し触れましたが、植物関係の異類婚姻譚は数多く残っています(ぼくの専門のひとつなので、データベース的なものも作成しています)。列島文化でよくしられているのは、「三十三間堂棟木の由来」という、浄瑠璃化されて広く知られるようになった物…

心理学者のピアジェは、アニミズムを幼児の心理的特徴と捉え、これは年齢を重ねるに従って、消えてゆくと指摘していました。心理学では発達の特徴を表す用語・概念が、史学では神話・文化を示していることが興味深いです。

そうですね、重要な指摘をありがとうございます。実は、指摘してくださった2つは、別々の概念ではないんですよ。原始的宗教状態としてのアニミズムは、イギリスの文化人類学者タイラーが、『原始文化』(1871年)のなかで概念化したものです。これは、宗教…

講義で伺った狩猟採集民の神話が動物や自然をもとに形成されたものが多いのに対し、古代ギリシアやローマなどの神様は人間の姿をしていることが多いと思います。これは、それぞれの生活の仕方やアニミズムに由来するものなのでしょうか。

必ずしも、古代ギリシャや古代ローマの神話に、アニミズム要素が欠落しているわけではありません。セウスをはじめとするオリュンポスの神々は、概ね何らかの自然現象、環境要素を反映していますし、鳥や獣へも自由にトランス・スピーシーズすることが可能で…

神話という言葉を聞くと、昔に作られたというイメージを持ちます。いったい人びとは、いつから神話を、現代のようにあまり信じなくなったのでしょうか。科学が発達したからでしょうか。 / 多くの神話は紀元前に生まれたものだと思うが、神話は未成熟な社会でのみ作られるのか。

神話とは、簡単に定義すれば起源の物語です。現在われわれの目前にあるさまざまな事象の起源を、「なぜそれがそのようなのか、いつからそのようなのか」を、太古に遡る何らかの物語で説明するものです。しかし、このような神話は、普通一般に考えるように古…

先生はなぜアナーキストなんでしょうか? これまでアナーキズムを信じる人と会ったことがないので、気になりました。

初回か2回目の授業ですでにお話ししたのではないかと思いますが、歴史学者や、社会科学系の研究者にとって、現行の国民国家はひとつの過渡的システムに過ぎません。それがどのように成立してきたのか、その機能にはいかなる利点と、同時にいかなる問題、課…