2019-10-30から1日間の記事一覧

美濃部達吉の天皇機関説が、大正デモクラシー期に至るまで日本法曹界の通説であったということは、とても驚きました。なぜ、これほどまで天皇が神格化されていた時代に、機関説が認められていたのでしょうか?

天皇機関説は、国家を法人とみて、天皇はそれを運営する機関=オルガンであると位置づけるものです。天皇大権を認めた大日本帝国憲法自体が、その権能を規定している点で立憲主義に則っており、支配の正当性には神話を置きながらも、その神聖性を無制限な権…

中国や韓国からすると、日本の首相が靖国神社を参拝するということは侵略戦争を起こした人物を肯定しているのと同じだ、日本は戦争に対して反省していないというが、戦争を肯定しているのは中国、韓国だろうと思う。軍事費を増やしたり、積極的に戦争を意識していると思う。

困りました、これまでこちらが講義でしてきた話を、8割方聞いてくれていなかったのでしょうか。私も中国や韓国の政治的な駆け引きを100%肯定しているわけではありませんが、慰安婦問題にしろ徴用工問題にしろ歴史認識問題にしろ、彼らが日本に対して主張し…

大正デモクラシーが続いていたら戦争はなかったかもしれない、と仰っていましたが、その場合、皇国史観にあたるものとしては何が考えられますか?

まず、同時期のドイツにおいて、ワイマール憲法に基づく民主的な体制からナチスが生まれてくることを考えても、世界恐慌からの復帰のために強固なナショナリズムが志向されることは、当時ひとつの必然だったのかもしれません。日本ではさらに関東大震災が重…

ヨーロッパでキリスト教、ユダヤ教、イスラム教などが発生し爆発的に広がったのに対し、東アジアではあまり一神教の概念自体が生じなかったのではないか、と思います。それはなぜだったのでしょうか?

身も蓋もない云い方になってしまうのですが、実は、現在の宗教学では、一神教/多神教というカテゴライズの仕方自体に疑問が提示されています。例えば、日本古代国家の神話的世界観では、皇室の祖先神=アマテラスを中心とした天神のパンテオンが高天の原に…

なぜ日本は昔、「瑞穂の国」と呼ばれていたのですか。

「豊葦原瑞穂国」とは、豊かな葦原の生い茂る、瑞々しい稲穂の稔る国、という意味です。弥生時代以来、列島社会における権力の伸張は、灌漑稲作の展開とともにありました。これから行われる、天皇の即位祭儀としての大嘗祭も、稲作を前提として成立していま…

マルクス主義が入って来たことで、具体的によい影響はあったのでしょうか。

歴史学の観点からいいますと、それまでの皇国史観が天皇中心の歴史観、すなわち支配者の視点による歴史観であったのに対し、マルクス主義歴史観は一般の人々の視点から歴史を考えようとしました。国家によって編纂された、あるいは支配者層によって記録され…

マルクス主義の件ですが、なぜ歴史学において法則性が重視されるのでしょうか。〈繰り返す〉ことに何の意味があると考えられているのでしょう。 / 歴史における法則とはそもそも何でしょうか、どの程度まで許容されるものなのでしょうか。

詳しくは次回お話ししますが、マルクス主義歴史学(唯物史観)の重要な点は、社会・経済が別の形式へ展開してゆく仕組みを、厖大な歴史資料から明らかにし理論にまで高めた点です。マルクスはまず、歴史を人間の自由な意志や観念の展開のうえに位置づけてき…