日本史概説 I(14春)
資料にあるとおりです。これはウケヒといわれる言語呪術ですが、あることを実践し、その結果がAならばA’、BならばB’と誓約します。一種の供犠であって、自分を祭儀の供物として差し出すことで、自分も縛りつつ相手も縛るのです。ここでは瓢箪が重要なア…
人身供犠が日本列島で本当にあったのかどうかは、古くから議論の絶えない問題です。最近では考古学の松井章氏が、高知県の居徳遺跡から出土した9体の人骨に執拗な人為的殺傷の痕跡が認められることから、縄文時代から戦争があった、もしくは人身供犠のよう…
跪伏礼や匍匐礼は、実は中国にも事例があります。例えば、床面に叩頭する跪伏礼は、中国では皇帝に対する最敬礼でした。『魏書』東夷伝倭人条にも、邪馬台国の人々が跪伏礼を行っていたことがみられます。授業でも扱ったように、同書は邪馬台国について好意…
建物の配置には、建物が持つ以上の意味が含まれているのです。まず授業でもお話ししたように、正確な南北方位が採られているかどうか、という問題があります。中国では、天帝の住む紫微宮が北天に輝くため、地上の天子はこれを背負って南面するとの発想があ…
大山誠一さんなどもそうした意見ですが、可能性は否定できません。それはつまり、倭王権のなかで、大王位を継承しうるグループが実力をもって競合する状態が、乙巳の変に至るまで連続していたということを意味します。ただし、それを主張するためには、『書…
これについては、さまざまな考え方がありうるでしょう。授業で扱ったのは、クーデターにより蘇我氏首班政権から政治の実権・仏法興隆権を奪った改新政府を、正当化するためであったという考え方です。そのために蘇我氏を専横の氏族として貶め、推古朝に政治…
授業でも述べましたが、太子の存在が、日本という国家の国際的危機において、時代を超えて常に語り出される〈誇り〉の論拠であったためでしょう。日本に住む人々のアイデンティティーが動揺する際、大国隋と対等に渡り合ったという神話が、ナショナリズムの…
すべての事例に適応できる基準というのはありません。個々の史料に即して、当時の政治情況を考古、中国史・朝鮮史、前後の関係から具体的に復原していったときに、何か矛盾はないか。
生前に譲位するという形式は、歴代の大王、天皇のなかで何度か減少しています。授業で扱ったなかでは皇極大王→孝徳大王がそうでしたし、奈良時代にも、元明天皇→元正天皇、元正天皇→聖武天皇、聖武天皇→孝謙天皇、孝謙天皇→淳仁天皇が生前譲位しています。「…
授業でもお話ししたと思いますが、普遍的な事例でした。フレーザーが収集したなかからいえば、アフリカの王たち =コンゴのガンガ・シトメ(大地の神と称され、当然の権利として初収穫を得る。最期を感じると門弟から継承者を選び、自分を絞め殺させる)・エ…
朝貢していることを支配ととるのか、という問題がありますね。それですと、いわゆる足利義満による勘合貿易の時期も、明の冊封を受けた「支配下」にあったということになります。しかし一般にいう支配は、他の国家によって当国の自治が侵害されることだと思…
講義でもお話ししていますが、別に渡来人が独自に喧伝し日本人の心性を変容させたわけではありません。あくまで国家がかかる思想を導入し、社会・文化を中国的に改変すべく喧伝していったのです。例えば授業でも扱った神殺しですが、多くは開発などの現場で…
講義でも少しお話ししましたが、外来の宗教が在来の宗教と共存する、混淆して定着する、といった事例は日本固有の現象ではありません。よく、多神教と一神教を二項対立的にみて、一神教は排他的云々と語る言説も見受けられますが、例えばキリスト教文化の広…
通史として書かれたものは非常にたくさんありますが、講義が予定の時代を網羅できなかったことからも分かるように、分量的には厖大になってしまいます。ある程度読書量を抑えて通史のあり方を掴もうとするならば、以下の文献がよいかもしれません。まず、シ…
2週続けて類似の質問をくださっているのですが、この点は講義の出発点としてお話ししたことです。2回にわたり授業しましたので、しっかり復習をしておいてください。端的にいってしまえば、中高の国史教育が「国民のアイデンティティーを涵養する」目的を…
大王ではありませんが、授業で扱った聖徳太子=厩戸王などは、まさに武烈などとは正反対の扱われ方をしています。『書紀』において、彼の言動は美化・神聖化されていますが、それは蘇我本宗家を打倒した改新政府、その後継者としての律令政府が、蘇我氏の専…
もちろん、古墳時代の祭祀のあり方を考えますと、大王に一定の神聖性があったことは否定できません。しかしそれは自身を神とするような神聖性ではなく、それを祀ることのできる最高の司祭といった位置づけでしょう。古墳の被葬者は神に近い扱いを受けていま…
もちろん、それは関係があったでしょう。位というよりは、出自、年齢などですね。父親が大王位にあったことも、もちろん条件のひとつでしょう。しかし実際のところ、継体以降の大王位継承の歴史のなかでそれれがしっかり遵守されたのかというと、充分な事例…
神道における最高神がアマテラスだという考えは、実は非常に新しいものです。例えば国学の代表的思想家のひとり平田篤胤などは、アマテラスは現実世界の主宰神に過ぎず、それを包括する幽冥界の主宰者オオクニヌシこそが最高神だと考えていました。明治の神…
久米邦武が、厩戸王出生譚をイエスのそれと結びつける見解を提出しています。イエスだけに限らず、英雄の特別な誕生の仕方を物語る異常出生譚ですので、物語の形式として伝来してきていたとしてもおかしくはありません。ちなみに、当時の王族の実名は、養育…
中国の都城制が導入される以前、ヤマト王権では歴代遷宮制が採られていました。すなわち原則として、即位した大王は自分自身の宮を新たに建設する、治世の間複数の宮を建設する場合もある、ということです。ゆえに宮が非常に多いわけです。ちなみに都城制導…
『日本書紀』では賄賂を受け取ったと書かれていますが、前代からの流れから考えてゆくと、九州地域には独自に半島と繋がっている勢力が幾つもあったのだと思います。ヤマト王権に建前としては服属しつつ、半島から種々の供与も受け、独立志向が強かったとい…
渡来系氏族のなかには複数の言語を駆使したものもいたでしょうが、史料には、「訳語(ヲサ。「曰佐」とも表記します)」の存在を確認することができます。彼らは職掌として記されている場合もあり、どうやら伴造制のもとでの氏族を意味する場合もあったよう…
講義でもお話ししたとおり、ひとつの渡来氏族全般が血縁で結びついた集団ではありませんので、蜂起するほど強固に結束した自律的グループにはなりえなかったようです。ただし、東漢氏は蘇我氏に爪牙として駆使されましたし(崇峻を暗殺したのは東漢氏です)…
例えば、現在の京都府上京区には、鴨県主が統治する鴨県が置かれていました。この地域には、極めて勢力が強かったがために朝廷が介入し、上社/下社に分離することになる賀茂社が存在し、朝廷へ氷を供御する氷室、薪炭の採取できる山地なども置かれていまし…
いわゆるヤマト王権の地方把握は、講義でお話ししたとおり地域首長を通じた委任統治ですので、公地公民制を前提とした個別人身支配には至っていません。しかし、委任を認め称号を下賜した首長たちは、何らかの形で王権と接触を持っているはずです。『書紀』…
文献資料としてはこの2つ、さらに『風土記』『万葉集』『懐風藻』『藤氏家伝』『続日本紀』などを限定的に利用可能でしょう。また同時代史料として、木簡や墨書土器などの出土文字史料、仏像の銘文や墓誌などの金石文を挙げることができます。しかしそれら…
中臣氏は、やはり百済を介して輸入した中国的な卜占=亀卜と、在来の祭祀・修祓の斎行、神話=歴史の管理を担うため、占部・卜部などの伴造として編成された氏族です。飛鳥地域に根拠地がないわけではないのですが、摂津のそれの方が勢力基盤として大きいの…
そうですね、氏族制の表徴として、王権との関係や奉仕の内容を示すカバネは、この頃に使用されてゆきます。渡来人の流入、支配機構の複雑化により、人工の氏族を多く編成することとなったので、カバネによって整理し序列を定めようとしたものでしょう。「連…