日本史特講:古代史(09春)
雷神虐待の伝承も、類型としては「神殺し」に属します。講義で紹介した雄略天皇時代の伝承では、雷神は天皇を畏怖させる力を持っていますが、『書紀』推古天皇26年条の伝承では、雷神は「天皇に逆らうことができようか」との宣言を聞いて力を失い、勅を奉じ…
災害の発生をどのように解釈するかは、時代によって変遷があります。古い時代にはやはり神の祟りと考えられたようで、『書紀』推古天皇7年(599)4月条には「地震神を祭る」記事が出ています。奈良期に入ると、災害は天子の不徳に対する天の譴責であるという…
もちろん、平城天皇の改革には朝廷内で反対意見もあったことでしょう。だからこそ、彼の政権は早期に潰えることになったのかも分かりません。
小子部の伝承については『霊異記』の方が詳しく書かれていましたが、これは『霊異記』の特徴なのでしょうか? 『書紀』と『霊異記』とで共通する説話があった場合は、基本的に『霊異記』の方が詳細なのでしょうか?
『書紀』はもちろん、『霊異記』も歴史書としての側面を持っていますが、やはり本質的には説話集なので、後者の方が物語的に詳細になることはあるかも知れません。講義で採り上げた伝承の場合、両書の情報ソースの問題も関わってきます。定説的には、ともに…
『書紀』は神と天皇との関係をところどころで修正し、天皇の権威を高めようとしていますが、すべてを徹底的に捏造しているわけではありません。ここはやはり、情報ソースである小子部氏の伝承に大きく規制されたのでしょう。また、天皇の自然神への優位は、…
鋭いですね。一説によると、大安殿での交合は、やはり農耕の豊穣を祈るための儀式だったのではないかとも考えられています。現在でも、農耕予祝儀礼のひとつとして、男女がもつれあうように舞う芸能が存在します。性交渉を擬することで収穫を祈るのはよくあ…
ああ!それは考えませんでしたね。面白い発想です。恐らく、雷神は蛇だけでなく子供とも表象されることが多いので、蜾蠃が赤を身に纏って雷神を演じたのと同様、雷神と似た姿をもってそれと交渉しうるようにする呪術なのだと思います。
蛇はアジアでは水神とみなされることが多く、列島では、縄文時代からその傾向がみえます。狩猟採集社会では、様々な自然地形を代表する動物たちを「主」として信仰する場合が多いですが、蛇は沼地や湿地帯の主であったようです。蛇をモチーフにした土器など…
今回お話ししたなかでは、一般的な秦氏イメージを踏襲して、現在秦氏をめぐる議論の論点となっている部分を隠しています。これからの講義のなかで、次第にその輪郭が明らかになってゆくはずです。
古代インドでは、アシュヴァ・メーダという王妃と犠牲馬との交合祭儀があり、それによって王は豊穣と宇宙の支配権を保証されたようです。共同体祭祀における馬と女性との繋がりはアジア世界に広く認められ、日本の東北地方にもオシラサマ信仰として確認する…
歴史における「聖数」には多々ありますが、「3」もそのひとつですね。中国的文化においては、『易経』などの影響で、3は天・地・人を表す数として、世界を表現する聖数と見立てられます。太陽の三脚烏にも、同様の意味合いがありそうです。
確かに、「明確な基準」といわれると存在しないかも分かりません。「歴史学的常識を逸脱している」といった見方では、時代・社会の変化に伴う価値観の移り変わりによって、あらゆる学説が「トンデモ」たりうるという結論に至ってしまいます(ま、本質的には…