歴史学特講(日本古代史:19秋)
樺太の産業育成、というのはもちろん理由のひとつでしょう。しかし単純に、プリンス・エドワード島と類似の環境を日本の領土内に探したとき、樺太や千島が浮かび上がってきたものと思います。当初、1909(明治42)年に木谷秀五郎がキツネ飼育を試みた豊原=…
まず、近世の北方毛皮交易の段階で、クロテンと銀黒狐が最も高級な毛皮として取引されていたためです。カナダでその養殖が開始されたのも、銀黒狐が高級取引品だったからにほかなりません。日本では、プリンス・エドワード島に由来するチャールズ・ダルトン…
これは、近代オカルティズムというより、もっと伝統的な思考との関係で考えたほうがよいかもしれません。東北地域は、近世から近代にかけて数々の深刻な飢饉にさらされますが、その大部分は寒冷地における無理な稲作の展開です。寒冷な気候を象徴する北とい…
大切な問題ですね。中国王朝に主催されていた東アジア世界には、まず前提として、文明/野蛮の差別構造があります(この点は、ヨーロッパも同じです)。松前藩士や和人商人らの意識の根底に、アイヌをそうした観点から卑賤視するベクトルがあったことは否定…
これも大きな問題です。近年のネオリベラリズムとグローバリズムによる侵蝕は、現代思想の世界では、〈みえない帝国〉といわれたりしていますね。かつての帝国が行ってきた分かりやすい暴力、抑圧行為に対して、現在の帝国の支配は目にはみえにくく、意識さ…
1709年、康煕帝の命令を受けてアムール川下流までを調査したイエズス会士レジス、フリデリ、ジャルトゥたちは、ウスリ川周辺で「ウスリの貴婦人」と呼ばれる女性に会っていますが、彼女は漢語を解し、容姿も所作も周辺の辺民とは異なっていたといいます。サ…
清王朝が黒貂の毛皮に対して下賜した錦がどの程度だったのかは不明ですが、アムール川流域で行われた山丹交易全般においていうならば、辺民たちはかなり高価な錦織物を手に入れていました。その様子は、間宮林蔵『東韃地方紀行』の記録した、満族商人と辺民…
宗教も大枠的にはひとつの〈物語り〉であり、その発生は自然環境のありようと、それに対する民族集団なり、地域社会なりの関わり方によって決まります。そのパターンは無限にありうるでしょうが、現実にはヒトの思考傾向、身体性によって、意外に限定されて…
まず、〈コモンズの悲劇〉という現象を勘案しなければなりません。ある自然環境を共同体が共有していたために、誰もが他の人間に取られる前にと資源を利用し、保全や保護を省みなかったために、環境自体が破壊されていってしまうというジレンマです。一般に…
ぼくの説明の仕方が悪いのですが、まずは、先住民女性に対する認識が多様であったこと、やはり根底にはヨーロッパ至上主義的な差別意識が存在したこと、また当時は白人と先住民との区別なく男性優位の社会であったことが前提です。女性が、男性によって道具…
まさにそのあたりのことが、交易のポイントなのでしょう。ヨーロッパの武器や火薬は先住民の間で珍重されましたが、当然そこには、それが(最大限には)有効活用されないような配慮があったと思われます。まずは価格の問題、極めて高値で取引することによっ…
もう遠い昔に共編の本に書いたことですが、確かにリン・ホワイト『機械と神:生態学的危機の歴史的起源』以降、今日の地球規模の環境破壊の淵源はキリスト教にある、という見方が人口に膾炙しています。事実、授業で扱っている大航海時代以降の植民地収奪に…
非常に難しい問題ですね。就職をめぐるバリアフリーをどこまで進められるか、それは社会を構成している私たちひとりひとりの思考、行動にかかっていると思います。「警察官やパイロット、電車やバスの運転手など、ある程度の運動能力と思考力をもって、他人…
もちろん、倫理的に是です。倫理というものは、永久不変な真理ではありません。時代によって、社会によって違いがあり、またどんどん更新されてゆく性質のものです。倫理の範疇は他者理解の拡大とともに、家族、隣人、地域、国内、国外、そして人間以外へと…
詳しくは谷泰さんの『神・人・家畜』や『牧夫の誕生』を参照していただきたいのですが、まず誤解があって、「生命の改変を行うようになった」ことが国家や宗教の核にんるのではなく、「生態系の利用」の時点、すなわちドメスティケーションの発想と知識・技…
心が痛いですね。動物や植物の権利については、近年ではピーター・シンガーが、理論的にも実践的にも大きな流れを作っています。「どのように考えるか」が重要な曖昧な部分については、もちろん各国、各地域、各階層、そして個々人によって大きな相違がある…
格差社会と階級社会の相違点は、どの程度その社会的・経済的位置が再生産され、次世代へ継承されてゆくかということでしょう。列島社会はもともと首長に依存した並列な共同体で階級的意識が弱く、なだらかで一定の入れ替わりのある〈階層〉社会とみられてき…
確かにそのあたりのことは判断が難しいですが、戦前・戦中の日本の技術力についてはそれなりの評価があり、またサンフランシスコ講和条約についてはアメリカの実質的な勢力下で連合諸国の承認がなされましたので、アメリカの意向も忖度されつつ決断がなされ…
授業では筆を折らざるをえなかったとお話ししたのですが、厳密には、久志はその後も名前を変え、短歌や小文を発表しています。しかし作品数としては多くはなく、内容もあまり振るいませんでした。40年後にかつてを回顧して行われたインタビューでは、筆禍事…
優生保護法については、どこかで扱いたいなと思っています。前のシリーズでは、ハンセン病患者のクリアランスの問題、すなわち「無らい県運動」に絡めて行われた強制隔離収容と、その後の優生保護法までの流れを扱いました。今回はリプロダクションの話もし…
あれ、授業で説明しなかったでしょうか? 国連で2007年9月13日に採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」には、あらゆる差別、強制的な同化、文化の破壊を否定し、先住民を内包する国家は、そうした抑圧の防止と彼等の救済のために、種々の効果的…