多くの物語のなかで、肉体と影の分離という現象がみられます。分離した影は主体性を失い、肉体を求めてさまようわけですが、影のない肉体には意識がちゃんとある。つまり人間は、肉体と意識だけでなく、肉体と意識と影という三要素によって構成されているのではないでしょうか。
哲学的ですねえ。確か、最近の『ワンピース』もそんな展開でしたね。物語が〈影〉を題材にすることが多いのは、それが人間の歴史のなかで、変わらぬ興味の対象であり続けたからでしょう。ところでご存知のように、人類最初の絵画は洞窟絵画が多いわけですが、その発想の原点も、炎にゆらめく影が壁面に映ったことにあったのかも知れません。影はもう一人の自分であり、自己を客観的にみつめなおすきっかけを作りもする。そういう意味で、想像力の源泉ともいえるのでしょう。