『杜家立成雑書要略』は、その後、貴族社会に広まったりしたのでしょうか。

これは書風を練習するための書物であり、また書簡の用例集でもあるわけですが、後者としては中国の地方の下級官人層、小地主層の生活世界を反映したものなので、光明皇后が書写し練習するのはやや不自然な気もします。『万葉集』は、和歌を手紙がわりに用いた書簡文学的趣がありますが、『杜家』に使われている語句も多く援用されていて、影響の大きかったことが確かめられています。コミュニケーション・ツールの範例としての役割も、充分に果たしたものと考えられます。しかし平安期には本自体が失われたのか、使用の痕跡はみられなくなるようです。