H君・Sさん・N君の報告についての講評(書きかけ)

 H君の報告は、注釈書の訓み方に引きずられてしまいすぎでしたね。まずは底本の情報を忠実に再現することが必要です。そのうえで、兼右のここが間違っている、ということであれば自分の見方を明確にして訂正する。そのプロセスを省略してしまうと、単に注釈書を引き写してきただけになってしまうので気を付けましょう。内容的な部分では、〈名〉の概念を解説してくれたのは良かったです。〈名〉は、王権と自氏との関係を体現するもの、王権への貢献と奉仕の由来を述べた歴史のようなものです。しれゆえに、「後葉の悪名となる」ことは大変な事態(それこそ不「名」誉な)だったわけです。また、摩理勢が墓所の廬を破壊するのは興味深いところです。蘇我氏が馬子の墓所に結集し、恐らくは神人共食の宴を催しているのは、蝦夷の族長位継承に関わる儀式でしょう。摩理勢はそれを妨害している、すなわち蝦夷のリーダーシップにNOを突きつけているのであり、それゆえに蝦夷にとって討伐しなければならない情況になるのです。摩理勢がなぜ泊瀬王のもとへ逃げ込むのか、この点も重要な意味を持っています。