中国では、ざんばら髪や着物を左前に着ている人物などは、文明化のなされていない夷狄の表象でした。髪を振り乱した形が魔除けになるというは、このことと何か関係があるのでしょうか。

関係しますね。中国に限らず、文明/非文明という二項対立的な構図のなかでは、文明が開明的な権力を有する一方、非文明の側に文明では推し測ることのできない恐ろしさ、呪術的な威力が見いだされることが多いのです(これは一種の差別意識です)。古代日本でも、代表的夷狄のひとつである隼人に魔除けの役割が期待され、宮廷への貢上が行われていました。