Tさん・Sさんの報告についての講評

 Tさんも、文章としてはだいたい読めていましたが、句読点を示すヲコト点が判別できていなかったようですね。字訓にも多少間違いがありました。ただし、レジュメの施注は詳細で、参考史料や図表も掲げられており、よい出来だったと思います。後は上のSさんと同じく、どこに関心を持って調べられるかでしょう。このあたり、朝鮮半島の政治情勢に対する実録的記事が続くため、中世史専攻の視点では興味を持ちにくいのかも知れませんが、君主の即位や崩御に際して交換派遣される使者の情報が、お互いにとっていかに重要であるかを示す貴重な記載と思います。
 Sさんも翻刻はまあまあでしたが、レジュメに間違いの多かったこと、施注が簡略に過ぎることが残念でした。音を示す傍書をほとんど無視していたのも問題?でしょう。内容的には、Tさん担当分と同様の記事が続きますが、最後、「蘇我大臣」がギョウ岐を饗応・賜物している点が重要です。本来は王がなすべきことを蘇我氏が代行?し、外交権を掌握しているかにみえることは、当時の蘇我氏の権威と地位を考えるうえで重要です。なお、Sさんも答えてくれたとおり、「大臣」の傍書「イ」は入鹿と読むことを意味すると考えられます。史実としては蝦夷とみるべきでしょうが、兼右の解釈、もしくは中世吉田家の解釈として注目すべきところでしょう。