柳を男女の出会い/別れの媒介とすることについて、女性に柳の名が付いていたり、柳に関連していたりするのは、「柳腰」「柳眉」といった言葉にみられるような、理想的な女性像を表すためという可能性は考えられないでしょうか。

柳を女性に見立てることは、そもそもその樹影が女性のしなやかさを連想させたからこそ生じてきたのでしょう。『柳氏伝』や『青邱野談』もそうで、必ずしも婚姻譚とは見なせないものでしょう。問題は、そうした柳=女性をめぐる男女の物語が、柳の持つ神話、宗教的性格とリンクしてゆくことです。『たますだれ』の説話は、その典型的なものでしょう。