Yさんの報告についての講評

 授業中に指摘した「泊」の左訓以外、翻刻は大変よく出来ていました。レジュメは、注にもう少し努力が欲しかった(注釈書だけに頼るのでなく)ところですね。内容的には、授業中に指摘したように重要な要素の多いところでした。まずは、射猟や相撲といった年中行事が、外交的な必要性から整備されていったことが、如実に表れています。東アジア諸国と対等に付き合うために、日本的な礼楽を構築してゆこうとしたのでしょう。叙述に関連するところでは、報告にもあった百済新羅の習俗への批判。全集の頭注のように「誤解」ともみえますが、前後の儀礼記事と一貫して礼楽の整備を叙述しようとしているのだとすれば、「日本は礼の行われる国だが、朝鮮諸国はそうではない」と恣意的に強調しようとしたと読めるでしょう。「白雀」の祥瑞記事も、本当に蘇我氏が提出したものかも知れませんが、やはり礼楽との関連で書かれているのかも知れません。