樹木伐採の際に「中臣祭文」が使われたとのことですが、わざわざその度に神官のような人を招いたのでしょうか。

樹木を伐る際に唱えられていたと思われる祝詞・祭文の類は、他にも幾つか見出すことができます。有名なのは『延喜式』神祇/祝詞に載る「大殿祭祝詞」で、木鎮めの技術を受け継ぐ忌部氏が樹霊を天皇居宅の守護神化するものなのですが、その前半部分は伐採時の木本祭において奉読されたと考えられています。他にも様々な呪文や所作があり、それらは時代を下るにしたがって簡略化していったと思われます。「中臣祭文」は中世のいわゆる〈大開発時代〉に対応して用いられるようになったと思いますが、とくに宗教性の高い木、巨樹や神樹などを伐採する際に神職を招いて唱えたのでしょう。