現代の私たちにとってウサギは可愛らしいイメージですが、中国で月に住むヒキガエルが夜を象徴するように、日本のウサギも夜のように暗いイメージがあったのでしょうか。

直接的に夜を象徴するというより、やはり再生のシンボルだったとみるべきでしょうね。ウサギは極めて繁殖力が高いので、西欧文化圏においてはイースターと結び付けられる反面、性や肉欲の象徴ともされました。インドでは、自分の身体を犠牲にして仙人を救ったウサギが、月へ祀られたよいう伝説も残っています。日本はインド、中国の物語を受け継ぎながら、月の満ち欠け=再生とウサギの生命力を重ね合わせ、さらに生命の根源たる神聖な穀物=イネから作られる、いわゆるハレの食べ物である餅を配したのでしょう。ヒキガエルは夫の羿を裏切った嫦娥が姿を変えられた姿だともいい、また罰を受けた仙人の呉剛が月で永久に桂を伐らされているという話もあり、中国では確かに月に対するマイナス・イメージがあるようです。それに比べて、日本は牧歌的ですね。