王道平の話で、「三度名を呼ぶ」とありました。孔子も愛弟子顔淵の臨終に際し、三度名を呼んで慟哭したとされていますが、この「三」という数字には何か意味があるのでしょうか。

昨年の後期特講でも詳しく話題にし、『歴史家の散歩道』掲載の拙稿でも触れたのですが、「三」は宇宙全体を象徴する基本的な数字として世界的に多く認められているものです。数学的にも物理的にも真理として君臨する数字でありキリスト教神学では三位一体、中国古代哲学では天・地・人の象徴として世界全体を表します。古くは殷代末期に三卜制という占い方が始まり、同一事について三度占いし多数決で判断することが行われました。以降、異界との交渉における呪文や所作は、三度繰り返すことがセオリーになってゆきます。魂呼ばいも異界から魂を取り戻す、異界との交渉の方法なので、三度行うことが求められたのでしょう。