『古事記』景行天皇段の后妃と皇子たちは、「匍匐ひ廻りて」哭いて歌を詠むわけですが、それは人間と歌のなかの「匍匐ひ廻ろふ野老蔓」という植物と、アナロジカルに結びつけられるのですか。

「匍匐ひ廻る」こと自体は喪葬儀礼の一環で、『古事記』のイザナミ埋葬場面にも出てきます。一方の「野老蔓」は植物の生命力を示すもの、つまり死者の復活を願う類感呪術のように考えられています。しかし、地を這い身をくねらせる蔓のように激しい悲しみを表現するという、徹頭徹尾喪葬儀礼の方向で、送る者とのアナロジーで考えた方が自然かもしれません。