高校の教科書で、「藤原京は石上山の木材を大和三山に囲まれた所に運搬し、造営された」と習ったのですが、本当ですか?

恐らく、「石上山」ではなく「田上山」の記憶違いでしょう。後日講義でもお話ししますが、田上山は滋賀県の南部にある山で、古代から連綿と林業が盛んに行われた場所です。藤原京造営時にここから木材が伐り出されたことは、『万葉集』の「藤原宮の役民の作る歌」に出てきます。奈良時代には、東大寺の造営にあたる令外官
「造東大寺司」の下部機関、「山作所」のひとつが置かれていました。やはり木材の伐り出し・製材などを行う機関です。近世にも周辺で激しい伐採の行われたことが史料的に確認でき(この講義の冒頭でお話しした、近世の「草山」をめぐる伐採・野焼きの典型例です)、現在でもその植生は回復していません。