『日本書紀』における大化改新の記述の信憑性はどれくらいでしょうか。

これは古代史における大論争が繰り広げられてきたところですね。現時点では、改新の諸政策については実効性の疑わしいもの、記述に粉飾の目立つものがあるものの、乙巳の変のクーデターと、それに連動する政治改革が行われたこと自体は否定されていません。しかし、クーデター自体についても細かな点は充分検討されねばならず、前後の記事との整合性や8世紀律令国家との関係、飛鳥の考古学的発見などから批判的に分析するのが常道となっています。近年の改新研究の画期は、1995年に刊行された遠山美都男氏の『大化改新』(中公新書)で、一般的には中大兄・中臣鎌足を主体に語られるクーデターが、実は後の孝徳天皇軽皇子が黒幕だったことを、氏族の地縁的関係などから綿密に実証した興味深い成果です。読み物としても面白いので、ぜひ夏休みにでも挑戦してみてください。