昔はよく「日照りで作物ができない」ことがあったようですが、現在では、作物に影響するほど雨が降らないことはあまりないように思います。昔と今とでは、やはり気候もずいぶん違うのでしょうか。

農業技術の向上や品種改良、輸入や備蓄によって、表面的には不作の甚大な影響を免れることはできていますが、現在でも天候によって農業に被害の出ることは多くあります。記憶に新しいのは平成5年(1993)の大凶作で、大規模な冷害や台風被害が原因となり、タイなどから輸入した米が市場に出回りました。日本のような食糧自給率の低い国では、今後の環境変化によって甚大な危機の訪れることが予想されます。ところで7〜8世紀は、長く続いた古墳寒冷期という寒冷多雨な気候から、ようやく温暖化が始まってきた頃です。しかし変化の過程で気候が安定せず、農業生産も時折被害を受けていた様子です。環境考古学の安田喜憲氏などは、大化改新のクーデターをこの気候のありように結びつけて説明しています。ただし、『日本書紀』は中国の史書に書かれた災害記事をそのまま引き写してくることもあるので、実際にあった出来事かどうか充分な検証をする必要があります。