龔勝不屈、孫宝自劾

【レジュメの訂正点(主要なもの)】
・「 忠怪、使所親問曰、前大夫為君設除大舎」(レジュメp.5-l.8)……正しくは、「 忠怪、使所親問曰、前大夫為君設除大舎」となります。
【注意すべき漢文訓読のスキル】
・云・曰・言・謂などの相違について(レジュメp.3-l.39)……基本的な使用の仕方として重要ですが、厳密には個々の書物によって使用の仕方が違ってくることがあります。日本書の場合はなおさらです。例えば『令集解』の場合、「云」「曰」を直接引用・間接引用を意味するよう使い分けている節があります。東野治之「古代人が読んだ漢籍」(池田温編『日本古代史を学ぶための漢文入門』吉川弘文館、2006年)に詳しい考察がありますので参照してください。
【テーマについて】……忠と義を扱う物語ですね。中国の史書では、権力者が義に反したとき、あえて出仕せずに野に下ることがよく賞揚されます。もちろん、これが誉めそやされるのは、大部分の官吏が権力におもねる存在だったからです。しかし、自分の栄達を擲って権力者の非を正す行為=諫こそが官吏の美徳であり、忠の本質であると理解されたのです。龔勝・孫宝はその代表例でしょう。また、これまで扱ってきた人物と同様、彼らを理解してくれる「知己」の存在が前提にあることにも注意すべきです。なかなか重用されなかった李瀚には、「知己」の到来こそ待ちこがれることであり、世にはびこる佞臣こそ糾弾すべき相手だったのでしょう。