ジブリ以外の作品で、先生が思う自然や歴史観が詰まった邦画がありましたらぜひ教えてください。

どうでしょう。洋画にしても邦画にしても、ちゃんと論じることのできる作品はあまりない気がします。以前、茨城大学で「日本と世界の歴史」というタイトルの集中講義をしたとき、『もののけ姫』と対の教材になるような洋画を探したのですが、ピンとくるものがみつかりませんでした(結局、アーサー王伝説に準えた『エクスカリバー』という作品を扱いましたが、『もののけ姫』と同テーマとはいえません)。ただし、環境問題を前提にするとあまり見受けられないのですが、自然と人間との相関的な交流、アニミズムに対する深い洞察という点では、テレビアニメーション版『蟲師』と小説版・アニメ版『精霊の守り人』がお薦めです。前者はちょうどNHKのBS2で再放送が始まりました。大友克洋の監督した実写版は〈超〉駄作ですが、テレビアニメは原作コミックを超える傑作です。蟲の設定、その専門家である蟲師のありようは、恐らく『ナウシカ』に多大な影響を受けているのでしょうが、それを純和風の民俗世界に置き換え、より生命の根底に近いところへ位置付けなおして物語を構築しています。後者についてはいわずもがな。その素晴らしさについては、『歴史評論』703号(2008年11月号)に短文を寄せましたので参照してください。