先日たまたまCMを見ていたら、宇宙飛行士の毛利衛さんが木に囲まれた道を歩きながら、里山について「日本人は古くから共生のあり方を知っていた」というような発言をしていました。CMになるほど、現代の里山認識は間違っているということでしょうか。

このCMについては、以前にも講義のなかで言及しました。まさに歴史的認識の欠如した里山観で、残念なことにこちらの方が一般的な考え方なのです。現在の環境問題は政治や経済と密接に関係していますし、共生概念は日本人のアイデンティティを表すものにもなろうとしていますので、肯定的な言説ばかりが横行するのです。過去の問題点はこのように隠蔽されてゆき、解決されないままに忘れ去られてゆきます。それを白日の下に明らかにして、現代との関係を問うのが歴史を学ぶことの意義のひとつです。