『古語拾遺』の御歳神への献上物として白猪・白馬・白鶏がありましたが、後世には辟邪の性格を持つ色と思います。飛鳥以前にも色による聖邪の区別があったのでしょうか。
白猪・白馬・白雞自体は、すでに中国文化に犠牲としてみえるもので、恐らく日本の神祇信仰もそれを取り入れたのでしょう。神祇については在来宗教ということで、あまり渡来系文化との影響は大きく語られませんが、実は儒教や道教の影響を多大に受けているのです。白については、本来は死との繋がりが深い色で、中国はもちろん、日本でも近世に至るまで喪服は白でした。花嫁の着る白無垢は、一度死んで嫁として生まれ変わるという意味で、やはり喪服の白なんですね。しかしその一方で、恐らくは「潔白」などのイメージから、穢れていない色、清浄な色との印象も強くなってゆきます。天皇の着衣が白なのはそれゆえと考えられます。飛鳥の時点でどれほどの意味が付与されていたかは分かりませんが、白壁などには、悪いものの侵入を防ぐ効果が期待されていた可能性はあります。