『書紀』の墓所破壊の記述・古墳の機能が面白かったです。首長霊継承の祭祀・饗宴の説明も、『書紀』の記述として説明されているのでしょうか。

古墳にどのような機能があったのかについては、実は充分には立証されていないのです。首長霊継承祭祀の場であるという考え方が最も有力ですが、もちろんそれを否定する見解もあります。『書紀』にはそのものズバリの記述は存在しないのですが、散見する「天皇霊」という言葉や、即位関連儀礼である大嘗祭の構造などから、継承祭祀の存在が想定されているのです。とくに、〈真床襲衾(マドコオブスマ)〉と呼ばれる秘儀は、ニニギが天孫降臨の際にくるまっていた敷物に体を包むことで、太子に天皇霊を憑依させ新天皇として再生するものと考えられています(より厳密には幾つかの学説が対立しており、大きく分けると1)先帝と新帝との共寝、2)新帝と神の嫁である采女との聖婚に大別できます。ともに折口信夫の議論から展開しているのが面白いところですが、大嘗宮を喪屋と捉えて首長霊の継承を重視する説、あるいは逆に産屋と考えてミアレ(神の誕生)と同一視する説など、様々なバリエーションがあります)。このような形式の祭儀が古墳を舞台に行われていたとしても、不自然ではありません。古墳から、先王の依代を意味するような王や宮殿(家形埴輪)埴輪、神を呼ぶ琴を弾くシャーマンの埴輪、饗宴の跡や供物を載せた高坏の埴輪などが出土しているのも重要と思います。