玉依日売の「玉」は神霊を表すとのことですが、生命を指す古語の「玉の緒」とはどの程度関わってくるのでしょう。『新古今集』に載る式子内親王の「玉の緒よたへなばたへね…」の歌は、恋の悩みによって神霊との繋がりを断つという意味にも解しうるのでしょうか。

玉依日売の「玉」も玉の緒の「玉」も、基本的には同じ意味で神霊を指します。これを近現代的に、神の魂、人間の魂、心霊、生命、などと区別して考えるとややおかしくなるのですが、古代においてはこれらは等しく「タマ」と呼ばれるもの、根を同じくする生命エネルギーなのです。いわゆるアニミズム的世界での同質性ですね。ゆえに式子内親王の歌も、「タマを私の身体につなぎ止めている緒よ」と厳密に読み込むこともできます。