神婚について、その妊娠は周囲に祝福されたのでしょうか。その子供は生まれてから、どのような位置付けで育てられるのですか。

ある氏族もしくは共同体において、神婚や神の子の物語は、氏族の長の家が始祖を語る際に用いられる言説形式です。つまり神の子は、自分たちが神の子孫であることを示すために政治的に創られてゆくのです。典型的なのは、『古事記』にも『書紀』にも載る三輪の祟り神大物主の物語で、その祟りを鎮めるため、神の指名により子孫のオホタタネコ(三輪氏の祖)が探し出され、以降三輪氏を奉祀する役割を担ったと語られます。三輪氏は本来河内に本拠を持ち、王権の太陽神祭祀が行われていた三輪山の祭場へ、須恵器を供給していた氏族であったと考えられています。彼らが大和へ進出し三輪山祭祀を継承した際、その正当化のために創出したのが上記の神話だったのでしょう。現実に父親が不明な子が生まれ、神の子と認識されるケースもあったでしょうし、神霊を宿して生まれ変わらせるという擬似的神婚(みあれ神事)も行われていましたが、すべて上記のような枠組みが基本となっていたと思われます。