なぜ牛は、水や川との関係で神聖化されるのでしょうか?

狩猟採集社会においては、それぞれの自然環境を象徴するような動物が、「主」として信仰されていたようです。例えば、湿地帯における蛇、山における熊、海におけるシャチといったような存在です。牛や馬は水辺に生息していたので、水と関連付けられて神格化されたと考えられています。しかし当然、各地に固有の文脈もあったでしょう。中国では、焼畑・牧畜の社会集団から、神への捧げものの発展型として、神の意志を聞き取るための骨卜というウラナイが開始されます。使用される骨は、鹿や羊の例もありますが、牛の肩胛骨が大半を占めています。そうしたところからの神聖化も関わっているでしょう。日本では、中国地方の瀬戸内海側に牛への信仰が特徴的に残っていますが、ここでは古くから塩の生産と運搬のために牛が使用されていたようです。地域地域の自然環境やそれに対応した人間の生業行動との関係から、牛の神格化も起こっていると考えられます。