史料10が気になりました。密告者が殺されるというのは、何か都合の悪いことがあったのでしょうか。

大伴宿禰子虫が長屋王の冤罪を疑っていなかったとすれば、中臣宮処東人はまさに虚偽の密告をした犯人として許せなかったことでしょう。配下に慕われた長屋王の一面が分かる事件とはいえ、これ自体は個人的な恨みによるものでしょうが、それを『続日本紀』が「東人は長屋王誣告せし人なり」と明記している点が重要です。つまり、桓武朝の『続紀』撰者は、長屋王の冤罪を認めているわけです。