アニミズムの社会で、『もののけ姫』に描かれているような神殺しが行われることはあったのでしょうか。

精霊自体も殺してしまうということですね。上の回答にもちょっと書いたのですが、アニミズムにも歴史的な諸段階があります。階層・階級や上下の権力関係が希薄な社会形態ではあまりないことですが、強力な権力を持った王や国家が成立してくると、神殺しという物語が作られてくるのです。もちろん、『日本書紀』や『風土記』のなかにも認められます。日本の場合には、7〜8世紀の中央集権国家が建設されてゆく段階で、多くの神殺し譚が生まれてきたと考えられます。たいていの場合は、英雄が自然神を倒して開発を達成してゆくという、自然環境の侵犯に関わる物語ですが、かかる英雄たちが「天皇の権威を背景にしている」のがポイントです。つまりそれらは、天皇が山や川などに住む自然神より上位の権威を持つことを喧伝する内容にもなっているのです。『もののけ姫』で、シシ神殺しを命じる「天朝」のお墨付きが出てくるのと同じ論理なんですね。