仏教の記述には中国を模倣したものが多いとのことですが、仏教が日本へ浸透する過程においても、初期にはそのような様相が認められたのでしょうか。

正倉院文書には、当代きっての名僧たちが、当時重要視された経典を注釈した書物などが残っています。そこから奈良時代の教学の傾向、水準などを窺うことができるのですが、驚くべきことに、大部分が中国の書物の丸写しになっているのです。奈良時代平安時代の仏教教学に詳しい曽根正人さんによると、この時点で、中国には仏教伝来から500年の蓄積があるが、日本はせいぜい200年に過ぎない。当の中国でも未だ多くの誤解があり、優れた理解もあればそうでもないものもあるのだから、日本の情況は推して知るべしである」と述べています。