鬼が出てくる昔話は多いですが、それらにはもとになる物語があったのでしょうか?

昔話は、本来、輸入された外国の話型や歴史上の事件などがもとになり、語り伝えられる地域の固有の事情を盛り込んで成立してゆきます。時代や社会のありようが変わればその形式も変化しますし、それが地域から切り離され国家や王権の語るものになってゆくと、政治的な要素も強くなってきます。以前にお話した浦島太郎などは、もともと丹後の地域に根差した神仙思想の濃厚な物語でしたが、現在ではほとんど思想性を伴わない海中ユートピアのファンタジーとなっています。桃太郎は、一般によく知られた類型とは異なる内容のものが各地に残っています。〈故郷〉とされる吉備地方では、『書紀』にも登場する吉備津彦による温羅征討の物語が、「桃太郎」の原型になったといわれています。近代になると、桃太郎は大日本帝国に、鬼は欧米列強に準えて語られてゆきますので、非常にきな臭い解釈へ姿を変えてしまいますね。そうした淵源の追究、変化の過程の追跡は面白いと思います。